インド西海岸の都市ムンバイを拠点に活動するスタジオ・ムンバイと、広島県尾道市の地元の職人やアーティスト、プロジェクトのスタッフが共に創り上げている宿に泊まったのですが。ここ凄いです。
スタジオ・ムンバイの国内初プロジェクトとして4年の歳月をかけて、地元の職人さんや建築家やアーティスト、スタッフなど多くの人と検証を繰り返しつくりあげた宿泊施設が2018年12月に完成しました。場所は、坂の町、広島県尾道市の千光寺へと続く坂道の途中。尾道の自然と文化・歴史に触れることができる「LOG(ログ/Lantern Onomichi Garden」。近くには志賀直哉が「暗夜行路」の草案を練った長屋もあります。
The Shindo Apartment was subsequently reborn as LOG (Lantern Onomichi Garden). It now exists as a beacon in the mountainous area of Onomichi city, Hiroshima pref., Japan. LOG is a place where both the country folk and city folk of this region cross paths. I went to stay inn and eat delicious local dishes. This is the first time to work on a construction project outside of India for STUDIO MUMBAI.
LOG (ログ)– Lantern Onomichi Garden-
住所:広島県尾道市東土堂町11-12 [Google Map]
*ご宿泊・ご利用は13才以上のみ
LOG – Lantern Onomichi Garden-
Address : 11-12 Higashi Tsuchido town, Onomichi city, Hiroshima pref., Japan [Google Map]
TEL : 0848-24-6669
*only over 13 years old
尾道駅前より続く道から、石畳の階段を100段ほど上がるとエントランスがあります。車でのアクセスはできません。
暖簾がかっこいい
LOGとは、「Lantern Onomichi Garden」の略。
エントランスのアプローチ。解体した建物の建材なども各所にリユースされています。
1963(昭和38)年に千光寺山の中腹に完成した新道アパートをリノベーション。
建物の外観。尾道の景観条例にも配慮した優しい色。外観の検証にはかなりの時間がかかったそうです。
外壁のオレンジのような茶色のような色は、顔料と土を漆喰に練り合わせて吹き付けたものです。内装の優しい白色も同様に、土と漆喰を練り合わせたものの吹き付けです。土は、敷地内の蔵や管理棟を解体した時に出た土で、砕いてふるいにかけて混ぜ合わせました。
化学塗料を使わずに自然顔料をつかって塗装。外観に使える塗料はほとんどないため長期的に考えると劣化していくが、そこも含めてこの建物のありかたの一部を示唆しています。スタジオ・ムンバイの建築家ビジョイ・ジェインさんが大切にしているのは「Praxis(プラクシス)」という精神です。「自然や社会に対する人間の働きかけを意味し、Idea(理念)からPractice(実行)にいたるまでのすべての道程」という考え方。
1階。日本の伝統工法を基礎に独自の若杉を活用した軸組工法を追求し、次代の木造建築の在り方を考える六車誠二建築設計事務所。マキテキスタイルスタジオのファブリックを取り扱っている方のギャラリーを設計したことにより、ビジョイさんと知り合う。スタジオ・ムンバイ初の海外プロジェクトと日本の建築の手仕事をつなぐ大役を果たしました。
ENTRANCE LOBBY 透明感のある水色。
LIBRARY ライブラリー
ビジョイさんの書斎をイメージしたライブラリー。
庭の緑とリンクするセージグリーンの壁と、掻き落とし仕上げの土間。
宿泊客のみ利用可能な空間です。
岡本仁さんの「また旅」
せとうちスタイルも。
ベンチのラグや、スタッフの巻きエプロンなどは「マキテキスタイルスタジオ」によるもの。東京・あきる野とインド ヒマラヤ山脈の麓に位置するリシケシュに工房兼ギャラリーを構えています。リシケシュの建物はビジョイさんがLOGの前に手がけたプロジェクトで、4年の歳月を経て完成しました。工房では手染めの糸や、手織りの布を作っています。
天井の照明
照明
壁の仕上げ
中庭にあった日本家屋を壊した際にでた土を、土間に再利用しています。
花器
家具
スタジオ・ムンバイの職人が手がけた家具。
窓からの眺め
2F サイン
客室の番号プレート。これも土の配合など何種類も検討してきめられています。
和紙に包まれた繭のような客室。
「白く柔らかいものに包まれる」というビジョイのイメージを具現化した客室。京都・綾部を拠点に活動する和紙職人「ハタノワタル」さんによるもの。土を一緒に漉くことで、落ち着いた柔らかい雰囲気を出しています。綾部地方に伝わる「黒谷和紙」を自ら漉くことだけにとどまらず、暮らしの道具やオブジェ、絵などのアート作品をはじめ、家具・内装の施工など幅広く手掛けています。
寝室。
客室は、い草や和紙、竹などの素材を使ってかぐや内装の実験・検証を繰り返し、素材の可能性を探ってきました。そこで選ばれたのは手すきの和紙。背景には和紙職人 ハタノワタルさんとの出会いがありました。ビジョイ・ジェインさんの”be gentle(優しくあれ)”という言葉に習い、床・壁・天井に和紙を貼り、繭に優しく包み込まれるようなイメージで優しい空間がつくられています。
障子から入る優しい光
小窓
家具
CAFE & BAR カフェとバー
西側にあるので夕陽の色をイメージした壁。カウンターテーブルは、京都・綾部を拠点に活動する和紙職人「ハタノワタル」さんによるもの。
ランプ
DINING ダイニング
とても心地よい朝日が差し込んでいます。天井のエアコンも壁の色に合わせて塗装されています。
この日の朝食のメニュー。夕食と朝食をこのダイニングで頂きました。地元食材を使った季節感あふれる料理は、料理家・細川亜衣さんが監修。とても美味しかったです。
玉ねぎのスープ
サラダ
尾道やしまなみ海道の島々の農家さんが育てた野菜
クランペット。広島県の牧場、「三良坂フロマージュ」のバターやチーズ。
いちごのマリネ。「三良坂フロマージュ」のリコッタチーズと、向島の蜂蜜(はちみつ)
PRIVATE DINING プライベート ダイニング
高貴な印象を与える青と黄
目がさめるような黄色と青の天井。はじめは黄色がメインの部屋であったが、職人やカラーデザイナー、スタッフ、スタジオ・ムンバイのビジョイさんとが丁寧に話し合いを繰り返していく中、塗るラインや色の検証などを行っていく過程で大きく最初のプランから変わっていくこともあるそうです。
色の検証。顔料と漆喰。
LOGの中には色を使った空間が5部屋あります。(2019年4月現在)
・BARは夕陽とマッチングするようなピンク
・DININGは木陰のようなグリーン
・LIBRARYは外の開放的な色に溶け込むようなセージグリーン
・PRIVATE DININGは高貴な印象を与える青と黄
・ENTRANCE LOBBYは透明感のある水色
階段
壁面のカラー検証
手すり
スタジオ・ムンバイの職人がひとつひとつ手作りしたオリジナルの家具。
黄色はマリーゴールド、青色はインディゴで染めています。
In 1963, the Shindo Apartment was created as an avant-garde mountainside apartment block on the slopes of Mount Senkoji in Hiroshima Prefecture. In this region, the remembrance of history and culture remains embedded and strong. This apartment, which has genially looked upon people’s activities for years, was subsequently reborn as LOG (Lantern Onomichi Garden). It now exists as a beacon in the mountainous area of Onomichi.
LOG is a place where both the country folk and city folk of this region cross paths. You can spend time in your own favorite way from morning till sunset at LOG, which lies on the road leading up to Senkoji Temple, whether it be a stopover to enjoy the views looking down on Onomichi City or to enjoy a garden or café at your leisure, or whatever you prefer.Collaboration with STUDIO MUMBAI
STUDIO MUMBAI is based in Mumbai, a city on the west coast of India. The LOG project is led by Mr. Bijoy Jain of STUDIO MUMBAI, and this is his first time to work on a construction project outside of India.
One of the characteristics of Bijoy Jain, the founder of STUDIO MUMBAI, is to incorporate the “strength of the hand” into the design. The architectural spaces he creates consider people, creatures, and the environment, and one can sense that he somehow has a connection with the spirit of the Japanese people.
He continues to say that even with the LOG project, the revalidation of the application of human power draws forth a great energy that cannot be seen with the eye. This philosophy goes beyond the realm of architecture, and it gave us important hints not only for modern ways of living and workmanship but also for our efforts towards local areas, which is the origin of Discover Link Setouchi.
Through our collaboration with STUDIO MUMBAI, we explore universal values which stretch across various borders such as those of countries, cultures, and languages. We wish to express our hope that the things which connect this city to the future will come through LOG.architecture
Bijoy Jain
Mr. Bijoy Jain was born in Mumbai, India in 1965. He earned a Master’s degree from the University of Washington in 1990. Beginning in 1989, he gained practical experience in Los Angeles and London, and subsequently returned to Mumbai in 1995 where he established Studio Mumbai Architects. In 2009, he won the Global Award for Sustainable Architecture from the French Architect’s Association (Institut français d’architecture (IFA)), and also received the Design for Asia (DFA) Award from the Hong Kong Design Centre. In addition, he received a special award in 2010 at the 12th annual Venice Biennale for “Work Place”.
昭和38年・千光寺山の中腹、先進的な山の手のアパートメントとして、「新道アパート」は誕生しました。歴史や文化の面影が色濃く残るこの場所で、人々の営みをあたたかく見つめてきたアパートメントは、その温もりを残しつつ 「LOG (ログ)– Lantern Onomichi Garden- 」として生まれ変わり、尾道 山の手にあかりを灯します。
LOGは、この土地で暮らす人々とまちを散策する人々が交差する場所。千光寺へ続く坂の途中、尾道のまちを見渡す旅の宿として、カフェや庭を自由に楽しめる公園として、朝から日暮れまで思い思いにお過ごしください。「STUDIO MUMBAIとの共創」
インド西海岸の都市ムンバイ。スタジオ・ムンバイは、このまちを拠点に活動しています。「LOG」は、ビジョイ·ジェイン氏率いるスタジオ·ムンバイがインド国外で初めて取り組む建築プロジェクトです。
スタジオ設立者であるビジョイ・ジェイン氏の建築の特徴は、人の「手の力」を取り入れるところにあります。そして、彼が創り出す空間は、人、生き物、環境全てに配慮があり、どこか日本人の精神と通ずるものが感じられます。
彼は、LOGのプロジェクトでも、人の手をかけ検証を繰り返すことで、目には見えない大きなエネルギーが生みだされると、言い続けてきました。その哲学は、建築の領域を超え、現代の生き方や働き方、そして私たちディスカバーリンクせとうちの原点である、地元地域への取り組みにも重要なヒントを与えてくれました。
私たちは、スタジオ・ムンバイとの共創を通じて、国や文化、言葉など様々な壁を超えた普遍的価値観を探り、まちの未来に繋がることをこの場所を通して表現していきたいと思っています。Bijoy Jain
architectureBijoy Jain
ビジョイ・ジェイン●1965年インド・ムンバイ生まれ。1990年ワシントン大学で修士号取得。89年からロサンゼルスとロンドンで実務経験を積み、1995年帰国。ムンバイに『スタジオ・ムンバイ・アーキテクツ』設立。2009年フランス建築協会の世界サスティナブル建築賞、香港デザインセンターのアジア・デザイン賞受賞。2010年第12回ヴェネチア・ビエンナーレにて、「ワーク・プレイス」で特別賞受賞。
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ジョイ・ジェインさん。インド西海岸の都市ムンバイでスタジオ・ムンバイ・アーキテクツを設立。「LOG」は、ビジョイ・ジェインさんがインド国外で初めて取り組む建築プロジェクトです。ビジョイ・ジェインさんの建築の特徴は、人の「手の力」を取り入れるところにあります。そして、作り出す空間は、人、生き物、環境全てに配慮があり、どこか日本人の精神と通ずつものが感じられます。
ビジョイ・ジェインさんは、LOGプロジェクトでも、人の手をかけて検証を繰り返すことで、目には見えない大きなエネルギーが生み出されると、言い続けてきました。その哲学は、建築の領域を超え、現代の生き方や働き方、そして私達が暮らす地域への取り組みにも重要なヒントを与えてくれます。
地元食材を使った季節感あふれる食事は、料理家・細川亜衣さんが監修しています。
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