朝日新聞にて『物語を届けるしごと』をご紹介いただきました!取材していただいた阪田記者、ありがとうございます。物語を届けるしごとは、瀬戸内海の有人島138島、四国99自治体の農山漁村の地域の美しい風景や文化を世界や次世代に届けたいとあるく・みる・きく仕事です。
地域を見る新鮮な視点を持っているために大事にしている言葉があります。それは、四国遍路をしている方の杖や笠に書かれている『同行二人(どうぎょうににん)』という言葉です。弘法大師が常に一緒に歩いてくれているという意味です。考古学者さんと一緒に歩けば2000年前の瀬戸内の風景がみえてきますし、料理家さんと歩けば四国独特の食文化に気が付かされたりします。私にとってのこの12年は、常に一緒に旅をしてくれる仲間の視点に発見と感動にあふれていました。
新聞記事でも少しだけ書いていただきましたが、アプリや地域学のワークショップや検定によって、視点や感動を共有するための仕組みをつくれないかなと模索しております。2022年は、観光地域づくり団体『 Next IRIAI Lab. 』 や 四国・瀬戸内検定協会(仮)などを通じて、新しい動きがお見せできたら嬉しいです。

The Asahi Newspaper introduced our activity “The Work of Delivering Stories”.

朝日新聞 2022年1月16日(日)


「よそ者」だから気づく「宝」
ウェブサイトで四国の魅力発信

ゆうさかなさん 「よそ者」視点で四国発信:朝日新聞

【香川】瀬戸内の風景や四国の農山漁村の食文化を素敵な写真とともに発信するウェブサイトが、世界160カ国以上からアクセスされている。手がけているのは一人の移住者。ゆうさかなさんの名刺には「物語を届けるしごと」と記されている。

 ――ウェブサイトは、いつから始めたのでしょうか

 四国についての発信は、私が高松に移住した2010年から続けています。観光雑誌には載っていなくても、私が直感的に伝えたいと感じた風景や農家さんの姿、ローカルな祭り、古墳、水車、お店など、「ニッチ」な魅力を紹介しています。

 これまでに160以上の国からアクセスがありました。写真が多く、英語表記もあるからでしょう。ただ、地元の人が気づかない「宝」に、海外の人の関心は高いと感じています。

 サイトで取り上げた高松の「ひょうげ祭り」を直接見に行きたいと海外の人に頼まれたり、桜の穴場として取り上げた場所が後に訪日客の人気スポットになったりもしました。サイトはそんな自分の楽しみのためで、収益は意識していません。

 ――ほかにどんなお仕事をされているのでしょうか

 徳島県唯一の村、佐那河内村の広報誌の編集を担当しています。表紙は、誌面で紹介する農家さんの顔のアップ。「おやじのこんな格好良い姿を見たのは初めて」と息子さんから感謝されたり、後に遺影に使っていただいたりしたこともありました。

 移住PR冊子や歴史ガイドブックの作成、企業の商品ロゴやホームページのデザインを頼まれることも多いですね。写真家? 編集者? デザイナー?と、不思議がられることもありますが、肩書は「物語を届けるしごと」と名乗っています。作り手に光を当て、その魅力や背景にある物語を伝える。私の中ではすべて同じことです。

 ――活動の原点は

 中学時代に英国の自然豊かなコッツウォルズ地方を旅した時の記憶が鮮明に残っています。黄土色の壁をした家が並び、私が写真を撮っていると地元のおじいさんが寄ってきて、「これはハニーブリック(蜂蜜色のれんが)と言うんだ、すごいだろう」と誇らしげに教えてくれたんです。自分たちのハニーブリックは何だろう。どうやって残していけるだろうか。その後、大学で都市計画を専攻し、東京の街をひたすら歩きながら考えていたテーマです。

 ――高松市に移住したきっかけは

 ロンドン留学を終えた時期に偶然、ツイッターで自分に合った仕事を募集していると知って飛んできました。当時、知り合いはゼロ。でも、「よそ者」だからこそ発見できる風景や文化があると思っています。今は同世代の仲間と「四国検定」やワーケーションツアーの提案を計画しています。

 ――移住して10年余り。四国の魅力をどう感じていますか

 多様性です。同じ四国でも様々な農作物があり、独自文化が残っています。ディズニーランドはないけれど、人生を豊かにしてくれるものにあふれている。

 心配なのは、地域の知恵が途切れてしまわないかということ。地元の祭りで神楽のリズムを若者が再現しようとしたけれど、唯一知っていたおじいさんが亡くなっていてできなかったという話も聞きました。そんな今だからこそ記録し、バトンを伝えたいと思っています。(阪田隼人)

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 本名は坂口祐(さかぐち・ゆう)。1980年生まれ、神奈川県出身。ロンドン大学で建築設計を学ぶ。2010年から四国経済産業局のウェブマガジンの編集を担当。15年の人間力大賞農林水産大臣奨励賞受賞。21年3月まで、高松市の移住応援隊リーダーを務めた。