香川県宇多津町鍋谷(なべや)の藤原たこつぼ製造所。せとうち暮らしでおなじみ考古学者の乗松真也さんのお話を聞きにきました。この地で藤原さんの手で作られていたたこつぼが、愛媛県松山市の野忽那島(のぐつなじま)や津和地島(つわじじま)など瀬戸内海の遠く西の島の漁師さんの間でも使われており、今でも港にいくと、藤原さんのたこつぼを見つけることができます。粘土は近くの香川県丸亀市吉岡という土地のもので。愛媛県今治市の菊間瓦にも使われていた良質の土があります。

I went to the Fujiwara octopus pot factory at Nabeya, Utazu town, Kagawa pref., Japan. I heard the story of octopus pots which are used at Seto Inland Sea from archaeologist Mr. Shinya Norimatsu. Mr. Fujiwara’s octopus pots are used Nogutsuna island, Tsuwaji island and so on which are located at Ehime pref., west side of Seto Inland Sea. The octopus pots are made from clay of Yoshioka, Marugame city, Kagawa pref.. The clay are also used as materials of roof tiles at Kikuma town, Ehime pref., Japan.

2014年9月撮影

藤原たこつぼ製造所。エビス様は、漁業の神様として瀬戸内の島々でも祀られています。


こちらが、焼く前の藤原さんのつくるたこつぼ。


まず粘土が運ばれて工場の一箇所にまとめられます。


それらを土練機(どれんき)という機械で土を練ります。
日本では大正時代にはいってからフランスから横浜に伝わり、
瓦作りなどに多く使われるようになったそうです。
(写真:鍋谷の蛸壺生産 – 瀬戸内生業史ノート


重要なのがこの機械。
四角く練られた土がこの機械を通ると、
筒状になりたこつぼの原型ができあがります。


(写真:鍋谷の蛸壺生産 – 瀬戸内生業史ノート


おもりで調整しています。


香川県三豊郡大野原村(現在の香川県観音寺市大野原町)
の村上鐵工所でつくられた機械。


さまざまな大きさの型。


でてきた円筒形の粘土をこの型にいれて
ろくろで回すとあっという間にたこつぼのカタチになります。


(写真:鍋谷の蛸壺生産 – 瀬戸内生業史ノート


乾燥されたのち、


窯にいれられて焼かれます。


岐阜県美濃市でつくられた燻焼炉


筒状の粘土を整形する手法以外にも
無駄のない工場の大量生産のラインがくまれていることも
安価で良質のたこつぼをつくる上で、重要な側面です。
藤原さんが焼く蛸壺は、多い時で年間100,000個にもなったそうです。


棚におかれていたオブジェ。名物かまど。藤原さん、チャーミングな方ですね。


左の写真は、棚に置かれていたハゼ用のハゼつぼ。つがいで行動するために2つ穴をあけているのだとか。本当につがいでここに入るのかはわかりませんが、愛嬌があります。たこつぼに対するこだわりも地域や漁師さんによって様々で、釉薬を中にまで塗って欲しいとか、たこつぼの外の色をこうしてほしいとかさまざまな要望があったと聞きます。でも、実際のところ、どのデザインが合理的で正解かどうかは、いまだによくわかっていません。

古代からこうして口伝承で土器の形や古墳の形も伝わっていったのかもしれない。デザイナーとしてはとても興味深い話です。


乗松博士、鍋谷のみなさん。ありがとうございました!!

参考:
せとうち暮らし12号
鍋谷の蛸壺生産 – 瀬戸内生業史ノート

せとうち暮らしvol.12