香川県綾川町の高鉢山の中腹に「風穴」と呼ばれる、涼しい風が吹く穴があります。かつて、養蚕に使われる蚕(かいこ)の卵や、食べ物や種子を保存するために使われていた穴です。電気エネルギーを使っていないのに、真夏で外は30℃の気温にも関わらず、風穴の中は9℃と肌寒いくらいでした。驚くほどの涼しさに感動しました。写真や映像だとどれくらい涼しいのかなかなか伝わらないので、これはぜひ現地で体感してほしいです!CO2排出などの環境問題を意識する昨今、山で冷やした冷風を利用して、夏場にエアコンいらずな建築をつくれるんじゃないだろうか。犬島や直島の三分一博志さんの建築はそれにあたるのかな。

There is a hole in the middle of Mount Takahachi in the town of Ayagawa, Kagawa Prefecture, where a cool breeze blows, known as a ‘Blowing cave’. In the past, these holes were used to store silkworm eggs for sericulture, foods and seeds. Even though no electrical energy was used, the temperature inside the Blowing cave was a chilly 9°C, despite it being midsummer and 30°C outside. I was impressed by how surprisingly cool it was. It is difficult to convey how cool it is from photos and videos, so I would like you to experience it for yourself on site! I wonder if Hiroshi Sanbunichi‘s architecture on Inujima and Naoshima falls into this category.

高鉢山風穴
住所:香川県綾歌郡綾川町西分 [Google Maps]

高鉢山(たかはちやま)
愛称:綾上富士(あやかみふじ)
標高:512.02m
山頂部の地質:讃岐岩質安山岩
地質構造:不整合

Blowing cave at Mt. Takahachiyama
Address : Nishibu, Ayagawa-cho, Ayaka-gun, Kagawa Prefecture [Google Maps]

Mount Takahachi
Nickname : Ayagami Fuji
Altitude : 512.02m
Geology of summit area: Sanuki andesite
Geological structure : Inconsistent

2024/07/06撮影

讃岐七富士の一つ「綾上富士」ともよばれる高鉢山(標高512m)


中腹あたりにまで車で来られます。標高370mに位置する場所に高鉢山の風穴があります。


道路から見える風穴の構造物。少し階段をあがると到着。


北西方向に讃岐富士(飯野山 / 標高422m)と瀬戸内海の島々が見えます。


風穴の構造物


山の斜面


中に入ってみます。すでに涼しい空気が流れているのがわかります。


山の山頂部分を構成している、讃岐岩室安山岩が積まれています。


この日(7月6日)、外の気温は30℃を超えていましたが、中の気温は9℃でした。肌寒いくらいです。電気エネルギーを使っていないのにここまで冷えるのは感動するほどの驚きです。


外に落ちていた石は白い石。


高鉢山案内図


風穴のしくみ:山の反対側の『ごうろう』から空気を取り込み、山の中で冷やされ、風穴から空気が抜けます。
風穴の使われ方(むかし):球根や種子、うどや果物、蚕の卵


高鉢山(たかはちやま)の風穴

高鉢山は「綾上富士」ともよばれ、讃岐七富士の一つとして数えられています。かつての火山活動を思わせる円錐形の山で、標高512mの山頂には1941〜1971年(昭和16〜46年)まで航空灯台が灯をともしており、地域のランドマークとなっていました。

この山の中腹、標高370mに位置する場所に高鉢山の風穴があります。

風穴は冷蔵庫がまだない時代に蚕種(さんしゅ / かいこの卵)の保存を目的に利用され、その後ウド、みかん、豆、グラジオラスなどの種子貯蔵の役割を担ってきました。大正のはじめには、この風穴の周りを高い石垣で囲んだ白亜の殿堂が建てられ、時の香川県知事の臨席を得て盛大な開所式が行われたと伝えられています。

風穴の中は真夏でも10℃前後に保たれています。その仕組は、高鉢山の東側「ごうろう」と呼ばれる岩肌の隙間から入った風が、山の中を通っていくうちに冷やされ、風穴からでてくるためと言われています。

百年以上の歴史をもつ高鉢山の風穴は、地元住民に親しまれながら、現在は夏の涼を楽しむクールスポットとなっています。

Blowing cave on Mount Takahachi
Mount Takahachi, also known as Ayagami Fuji, is one of the seven Sanuki Mountains. It is a cone-shaped mountain reminiscent of former volcanic activity, and an aeronautical lighthouse was lit on the 512 m-high summit from 1941 to 1971 (Showa 16-46), making it a local landmark. On the side of this mountain, at an altitude of 370 m, is the Wind Cave of Mount Takahachi. The windhole was used to store silkworm eggs in the days when refrigerators were not yet available, and later played the role of storing seeds of udo salad plant(Aralia cordata), mandarin oranges, beans, gladiolus and other plants. At the beginning of the Taisho era (1912-1926), a chalk hall with a high stone wall was built around the Blowing cave, and a grand opening ceremony was reportedly held in the presence of the governor of Kagawa Prefecture at the time. The temperature inside the windhole is kept at around 10°C even in mid-summer. It is said that this is because the wind enters through a gap in the rock face on the east side of Mount Takahachi called Gourou, cools down as it passes through the mountain, and comes out through the windhole. With a history of more than 100 years, the wind holes on Mount Takahachi are now a cool spot for enjoying the coolness of summer, while being popular with local residents.

高鉢山風穴
住所:香川県綾歌郡綾川町西分 [Google Maps]

高鉢山(たかはちやま)
愛称:綾上富士(あやかみふじ)
標高:512.02m
山頂部の地質:讃岐岩質安山岩
地質構造:不整合

Blowing cave at Mt. Takahachiyama
Address : Nishibu, Ayagawa-cho, Ayaka-gun, Kagawa Prefecture [Google Maps]

Mount Takahachi
Nickname : Ayagami Fuji
Altitude : 512.02m
Geology of summit area: Sanuki andesite
Geological structure : Inconsistent

風穴 – Wikipedia

四国地方の風穴

高鉢風穴
香川県綾歌郡綾川町西分(江戸時代における讃岐国阿野郡西分村、幕藩体制下の讃州高松藩知行西分村)に所在。

大成風穴群(おおなるふうけつぐん)
愛媛県上浮穴郡久万高原町大成(江戸時代における伊予国浮穴郡内)に所在。かつての蚕種貯蔵風穴。

夏期に下方で冷風が吹き出す「冷風穴」がある一方、冬期には「冷風穴」が風の吸い込み口になり、山の上方で煙突のように温風が吹き出すことがある。これを「温風穴」という。冬期には冷風穴から冷えた外気が吸い込まれ、冷風穴に近い風穴内の岩石が著しく冷却される。その蓄熱によって春から夏までの岩石の低温が維持され、そのため冷風穴から冷たい風が吹き出すと考えられる。

利用

江戸時代中期にあたる宝永年間(1704-1711年)、信濃国安曇郡稲核村(幕藩体制下の信州松本藩知行稲核村。現・長野県松本市安曇稲核)の稲核風穴では、風穴を利用した漬物小屋を作って漬物保存に利用していた。漬物は松本城主に献上されていたという[9]。

開口部が大きく有名な風穴は、一部で観光名所になっている。日本では夏場でも付近が涼しいことから山地の住民に知られるようになった小さな風穴が全国に点在している。これらは野菜・漬物などの保管用に加えて、明治時代に養蚕に使う蚕の卵の保存に使用された。風穴の上に建てられた「風穴小屋」は全国に少なくとも280カ所程度あった。風穴小屋は電気冷蔵庫が普及した大正中期以降、ほとんどは使われなくなったが、種子や酒などの保存用に再建・新設された例もある。風穴の研究者や愛好者が集まる全国サミットが開かれているほか、その研究成果をまとめた清水長正・澤田結基 編『日本の風穴』が2015年(平成27年)に刊行された[5]。

荒船・東谷風穴蚕種貯蔵所跡(群馬県)は、ユネスコ世界遺産「富岡製糸場と絹産業遺産群」の構成物件である。

富士山山麓の富岳風穴、西湖蝙蝠穴、駒門風穴などの溶岩トンネルは、古くから観光用の洞窟として著名である。 北海道の遠軽や然別火山群、寒風山、秋田県湯沢の三関風穴、群馬県の荒船風穴、兵庫県の神鍋山、隠岐の岩倉、長崎県の雲仙岳では風穴がジオサイトになっており、ユニークな自然の価値が認められている。秋田県の長走風穴や宮城県の材木岩風穴、佐賀県永野の風穴などは避暑のための公園として整備されている。新潟県の山伏山風穴、浜松市の鷲沢風穴、香川県の高鉢山風穴などは、キャンプ場近辺のクールスポットとして注目されている。また、現在も実用的な冷蔵倉庫として利用されている風穴が各地にある。稲核風穴や、津南町の見倉の風穴、山梨県早口町の久田子風穴、兵庫県の神鍋山風穴などはいずれも集落近傍の風穴で、種や野菜、漬物や果実の貯蔵に利用されている。長野県長和町では、1992年(平成4年)に農山漁村活性化集出荷施設として、風穴を生かした天然冷蔵倉庫が新設され、特産の蕎麦の実を保存している。また、特に施設はないが、上高地岳沢の「天然クーラー」や双六岳登山ルートの蒲田川左俣林道沿いの「お助け風」、後方羊蹄山の比羅夫コース2合目の「風穴」などは、夏の登山シーズン中に登山者へ涼を供している。

養蚕業への利用の歴史

江戸時代までは、大半の蚕の品種は春の孵化から6月末の産卵まで、1年に1度の飼育しかできなかった。当時は桑の芽吹きに合わせて卵を部屋の中で上下させたり、火鉢で暖めたり、冷たい所に置いたりして、慎重に温度管理を行い孵化の時期を桑の芽吹きに合わせて調節していた。長野県の南安曇地区では、江戸時代後期の文久年間(1861-1865年間)にはすでに風穴に蚕種を保存して孵化を遅らせる手法があったことが記録されている。幕末の慶応2年(1866年)には、輸出したものの過剰になって日本に返されていた蚕種のうちの稲核風穴(前田風穴)に保存しておいた分を、大遅霜で蚕が大被害を受けた際に取り出して飼育してみたところ、一定量の繭を得ることができた。これが蚕種冷蔵の風穴利用の本格的な起源となったとされる。1878年(明治11年)には、風穴蚕種の製造が政府に許可され、風穴を利用した年間多回飼育が全国に広がっていった。しかし、風穴を利用した蚕種貯蔵は大正時代には減少し、1935年(昭和10年)にはほぼゼロになった。これは愛知県の小池弘三が1914年(大正3年)に開発した人工孵化技術が全国に普及していたためであった。その技術というのは、蚕種を塩酸に浸し、越年状態に至った蚕種を強制的に孵化するというものである。また、風穴は一般的に交通の不便な山中にあることが多く、明治時代から冷蔵庫の利用が考えられていた。すでに1908年(明治41年)には冷蔵庫で保存した蚕種と、風穴で保存した蚕種に大きな違いが無いことが研究されていた[6]。なお、2011年(平成23年)3月11日に東日本大震災が発生して東日本の電力供給が極めて不安定な状況に陥った際には、電力会社が輪番停電を実施したことで、養蚕業者は貴重な蚕の系統を電力に頼ることなく冷凍保存する必要に迫られ、前田風穴内での蚕種の保存が実施された。