丹下健三によるシンメトリーの美
1989年11月3日に開館した横浜美術館は、日本を代表する建築家・丹下健三(1913–2005)が手がけた建築です。丹下が国内で初めて設計した美術館としても知られ、横浜の新しい文化シンボルとなりました。

The Beauty of Symmetry by Kenzo Tange
Opened on November 3, 1989, the Yokohama Museum of Art is a building designed by Kenzo Tange (1913–2005), one of Japan’s most renowned architects. Known as the first museum Tange designed in Japan, it became a new cultural symbol for Yokohama.


外観は石造りの壮大なシンメトリー。中央にそびえる8階建ての半円柱タワーを基点に、左右180メートルにわたる長い柱廊が広がります。右端にはアトリエ、左端には美術図書室が配置され、「みる」「つくる」「まなぶ」という美術館の理念を建物自体が体現しています。

The exterior features a grand, symmetrical stone structure. Centered around an eight-story semi-cylindrical tower, a long colonnade stretches 180 meters to each side. The atelier is located at the right end, while the art library occupies the left end. The building itself embodies the museum’s philosophy of “viewing,” “creating,” and “learning.”

グランドギャラリーの迫力
館内に入ると迎えてくれるのが、御影石をふんだんに使った高さ約16メートルの大空間「グランドギャラリー」。左右63メートルに広がる階段状の展示空間は圧巻で、横浜美術館を象徴する場所です。この空間は「じゆうエリア」として誰もが楽しめる開かれた場となり、訪れる人々を温かく迎えています。

The Grand Gallery’s Impressive Scale
Upon entering the museum, visitors are greeted by the “Grand Gallery,” a vast space approximately 16 meters high, generously clad in granite. The spectacular, 63-meter-long stepped exhibition space stretching left and right is truly awe-inspiring and serves as the symbol of the Yokohama Museum of Art. This space functions as a “Free Area,” an open space where everyone can enjoy themselves, warmly welcoming all visitors.


向かいのMARK IS みなとみらいMJD(三菱地所設計)

みなとみらいとともに歩む
横浜美術館は、かつて造船所だった土地を再開発した「みなとみらい21地区」の中心に建てられました。1980年代から進められた都市計画の中で、新しい街と文化施設の象徴として設計され、港町横浜の発展とともに歩んできました。

Walking alongside Minato Mirai
The Yokohama Museum of Art was built at the heart of the Minato Mirai 21 district, redeveloped from land that was once a shipyard. Designed as a symbol of the new city and its cultural facilities within the urban planning that began in the 1980s, it has walked alongside the development of the port city of Yokohama.


ピンク色の御影石。岡山県産の万成石(まんなりいし)に似ているけどどうなんだろうか。石をみるとつい四国や瀬戸内の石なのか気になってします。

Pink granite. It resembles Mannari stone from Okayama Prefecture, but I wonder how similar it really is. Whenever I see stone, I can’t help but wonder if it’s from Shikoku or the Seto Inland Sea region.


ピンク色のロッカーやテーブルなどの什器(じゅうき)。設計は、乾久美子さん。設計者・丹下健三が使った御影石に埋め込まれているさまざまな色を抽出しデザインされたオリジナルの什器。乾久美子さん「横浜美術館の特徴である巨大な天窓が修復されたことをいかし、自然光の下で石の色と什器がお互いに引き立てあい、和らいだ雰囲気が漂う場所を目指しました。」

このピンクのもとになった、ピンク色の御影石が、岡山県の万成石(まんなりいし)であれば、それは瀬戸内の石なので少しうれしい。丹下健三と瀬戸内の関係は、丹下が幼少期を過ごした故郷の瀬戸内地域(今治市や広島市)で初期の代表作を数多く残し、瀬戸内という土地の魅力を建築に昇華させたことです。

リニューアルオープン
2021年から大規模改修のため休館していた横浜美術館は、2025年3月、「横浜トリエンナーレ」にあわせてリニューアルオープン。建築家・乾久美子氏の事務所が空間構築とサイン計画を担当し、より多様な来館者が楽しめる空間へと進化しました。

Renewal Opening
The Yokohama Museum of Art, which had been closed since 2021 for extensive renovations, will reopen in March 2025 to coincide with the 8th Yokohama Triennale. Architect Kumiko Inui’s office oversaw the spatial design and signage plan, evolving the space into one that can be enjoyed by a more diverse range of visitors.

建築と美術を体感する場所
横浜美術館は、都市と芸術をつなぐ大きな存在です。丹下健三のモダニズム建築の力強さを体感すると同時に、多彩なアートに触れられる空間。横浜を訪れる際には、美しい街並みとともにぜひ足を運びたいスポットです。

A Place to Experience Architecture and Art
The Yokohama Museum of Art stands as a major presence connecting the city and art. It is a space where you can experience the powerful modernist architecture of Kenzo Tange while also engaging with diverse art. When visiting Yokohama, it is a spot you’ll want to visit alongside the beautiful cityscape.

横浜美術館
住所:神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1 [Google Maps]
時間:10時~18時(入館は閉館の30分前まで)
休館:木曜日、年末年始

Yokohama Museum of Art
Address: 3-4-1 Minatomirai, Nishi-ku, Yokohama-shi, Kanagawa
Hours: 10:00 AM – 6:00 PM (Last admission 30 minutes before closing)
Closed: Thursdays, Year-end and New Year holidays

概要 – 横浜美術館|Yokohama Museum of Art

横浜美術館は、1989年11月3日に開館しました。
迫力のあるシンメトリーな外観と、吹き抜けの開放的な「グランドギャラリー」が特徴の当館は、9つの展示室のほか、多彩なワークショップを行うアトリエ、約24万冊の蔵書がある美術図書室なども揃う、国内でも有数の規模を誇る美術館です。国際的な港町、横浜にふさわしい美術館として、開港以降の近・現代美術を幅広く扱い、15,000点を超える(2025年3月現在)所蔵品からテーマを立てて紹介するコレクション展や、バリエーションに富んだ企画展を開催しています。
横浜の街が育んできた歴史と、発展し続けるみなとみらい21地区の息吹を感じながら、横浜美術館で充実した時をお過ごしください。

施設紹介
石造りのシンメトリーな外観が特徴的な横浜美術館の建物は、日本を代表する建築家、丹下健三(1913-2005)により設計されました。
左右180メートルのファサードには、長い柱廊が広がっています。8階の最高層に達する半円柱が目を引く中心部を基点に展示室、右端棟にはアトリエ、左端棟には美術図書室が配置され、当館の理念である「みる」「つくる」「まなぶ」を建物が象徴しています。

グランドギャラリー
御影石をふんだんに使った最頂部約16メートルの広々とした吹き抜けのエントランスと、左右約63メートルに広がる階段状の展示空間からなる、横浜美術館のシンボルともいえるスペースです。この空間は、あらゆる人を歓迎する、横浜美術館のおもいをあらわす場所、より自由でひらかれたスペース「じゆうエリア」の中心として、皆さまにお楽しみいただいています。

建築 – 概要 – 横浜美術館|Yokohama Museum of Art

横浜美術館の建築について
横浜美術館は、日本のモダニズム建築の巨匠と称される建築家・丹下健三(1913-2005年)が設計しました。生涯で民間公共あわせて400もの建築を手がけた丹下が国内で初めて美術館として設計した建築(※)、それが横浜美術館です。

2023年に着工40周年となる「みなとみらい21地区」は、かつて造船所であった場所に造成された計画都市です。横浜美術館は同地区の中心に位置するシンボリックな文化施設として建設されました。新しい街と美術館はどのような関係をつくることができるのか。都市構想に関わった多くの人の想いは、建築家・丹下健三に託されたのです。

横浜美術館を訪れると、公園に面したファサードがひとびとを迎えます。8階建ての半円柱のタワーが中央にそびえ、低層に広がる部分は展示フロア、向かって右端の棟にはアトリエ、左端の棟には美術図書室が左右対称に配されています。「みる」「つくる」「まなぶ」という横浜美術館の基本理念を、建物が象徴しているのです。

わたしたちのビジョン – 横浜美術館|Yokohama Museum of Art

乾 久美子氏メッセージ
設計者・丹下健三が使った御影石に埋め込まれているさまざまな色を抽出し、オリジナルの什器をつくりました。横浜美術館の特徴である巨大な天窓が修復されたことをいかし、自然光の下で石の色と什器がお互いに引き立てあい、和らいだ雰囲気が漂う場所を目指しました。
入ってすぐ正面の「まるまるラウンジ」にはいろいろなサイズのテーブルと椅子を揃え、ひとりでも、みんなでいても居場所と感じられる場所になればと考えました。また、ユニット化した什器はシーンにあわせて組み合わせが変えられるようになっています。
什器の制作にあたっては、さまざまな障がいのある方たちと共にインクルーシブワークショップを実施しました。原寸大のモックアップを試しながら知見を得るという貴重な機会がなければ生まれなかった家具もありますので、オープンを楽しみにしていてください。

<プロフィール>
1969年大阪府生まれ。2000年乾久美子建築設計事務所設立。2016年より横浜国立大学都市イノベーション学府・建築都市スクール(Y-GSA) 教授。代表作に、延岡駅周辺整備計画、みずのき美術館、宮島口旅客ターミナル、釜石市立唐丹小学校・釜石市立唐丹中学校・釜石市唐丹児童館など。

横浜美術館 2024年1月10日発表・プレスリリースより引用