トレンカディス(カタルーニャ語)というのは、
ガウディ作品の曲面を覆う、破砕タイル仕上げのことです。
近年の流行といえる、三次曲面をもった建築のいくつかは
継ぎ目のない滑らかな曲面仕上げをほどこしたものがあります。
去年、父親ととある三次曲面を屋根にもつ建築を見に行きました。
父が言うには、その滑らかな曲面をめざした建築は、
遠目でみているぶんには美しくみえるものの、
近くで見たときにはその曲面が破綻しているらしいのです。
僕の父親は、車のエクステリアデザインや陶芸の経験から、
普通の人より曲面にたいする意識は強いのだと思います。
おそらく図面やCGにおいては綺麗にみえる建築も、
その巨大さゆえに完成品の精度はせいぜい数ミリ。
コンマ数ミリの精度を求められる車のものさしで測ると、
建築のそれはあまりに粗末なのかもしれません。
その時、話してたのは、ガウディのトレンカディスについて。
プロダクトデザインで求められる精度で建築をつくるのが不可能であれば、
それを前提に建築を設計する必要があって、
それでも三次曲面の建築をつくる場合、
その曲面の破綻を回避する方法を建築家は考えなくてはいけない。
そのひとつの答えが、ガウディのトレンカディス
なんじゃないかっていう話をしていました。
つまり、破砕したタイルという、ディテールの集合によって覆うことで、
曲面の精度はそれほど気にならなくなる。
きっとこういう、提案→評価→問題点の発見→解決策の検討
を繰り返してようやく、後に傑作と呼ばれる建築作品は生まれてくるのだろな。
ガウディのつくった山に登って、その肌理の勾配を見たとき、
そんな想像を膨らましていました。

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参考:
【建築家】ガウディ研究:田中裕也のバルセロナ便り]
ガウディコレクション
L’església -Cripta- de la Colònia Güell
バルセロナ、ガイド。カタルーニャ地方の有名人のご紹介