西日本最高峰の石鎚山(いしづちさん)を望み
「うちぬき」と呼ばれる綺麗な湧水のある瀬戸内海沿岸の町、愛媛県西条市。
この土地で新しいコンセプトのまちづくり「糸プロジェクト」が進められています。
建築家の隈研吾さんや乾久美子さんらを審査員に招いて、
全国から住宅部分90戸の設計案を募集し、39歳以下の若手建築家9組を選び、
建設・販売するという、世界的にも珍しい建築設計コンペです。

愛媛県西条市というと、
イサム・ノグチさんが四国に来る際に重森三玲さんが案内した「保国寺(ほうこくじ)」の四国最古の名園や、
安藤忠雄さんが設計した「南岳山・光明寺」などもありますので、
全国から現地視察で来られる方はあわせて足を運んでいただけるといいかもしれません。

登録・作品提出締切:2017年3月6日(月)必着 送付のみ受付。持ち込み、バイク便不可。

審査委員
審査委員長隈研吾 (東京大学教授)
審査委員
 乾久美子 (横浜国立大学大学院Y-GSA教授、乾久美子建築設計事務所主宰)
 馬場正尊 (東北芸術工科大学教授、Open A代表)
 馬郡文平 (東京大学生産技術研究所特任講師)
 山名正英 (糸プロジェクト実行委員会代表)

コンペ概要
●東京大学隈研吾研究室で作成されたマスタープランを元に、住宅部分90戸の設計案をコンペ形式で広く全国から募集します。

●住宅部分90戸は9区画に分けられ、それぞれの区画の設計者を選定します。9組の設計者を選ぶコンペです(1区画は6戸のグループと4戸のグループに分けられています)。

●9区画の中から1区画を選び提案してください。ただし、1次審査終了後またはコンペ終了後、区画替えをする可能性がありますのであらかじめご了承ください。

提出先
株式会社新建築社「伊予西条 糸プロジェクト 住宅設計コンペティション」係(必ず明記のこと)
〒100-6017 東京都千代田区霞が関3-2-5 霞が関ビル17階
tel. 03-6205-4380(代表)

スケジュール
告知開始:2016年12月1日(木)
質疑締切:2017年1月16日(月)
登録・作品提出締切:2017年3月6日(月)
1次審査結果発表:2017年3月中旬
1次審査通過者オリエンテーション:2017年3月24日(金)
2次審査:2017年4月15日(土)
最終結果発表:2017年6月1日(木)
基本・実施設計終了:2017年10月中旬
着工:2018年1月下旬
※着工については全棟一斉着工ではなく段階を踏んだ着工を予定しています。

1. 敷地条件
所在地:愛媛県西条市朔日市(ついたち)ほか
地域地区:無指定地域(用途地域)、田園居住地区、幹線道路沿線地区(一部)、建築基準法第22条区域
建蔽率:60%
容積率:200%
全体敷地面積:約66,500m2(住宅エリア面積:約31,300m2、商業エリア面積:約35,200m2)
道路幅員:マスタープラン参照
敷地内高低差:なし

2. 各区画の敷地面積
1:580+900=1,480m2
2:585+870=1,455m2
3:595+900=1,495m2
4:600+900=1,500m2
5:600+900=1,500m2
6:600+870=1,470m2
7:600+870=1,470m2
8:580+870=1,450m2
9:580+870=1,450m2

3. 住戸の建築条件
敷地面積:150m2程度
延床面積:120m2前後
階数:法規に則った高さ制限内に収めること。地下は不可。
構造:在来木造工法
給水方式:自噴する地下水「うちぬき」を利用
排水方式:合流式下水道

4. その他の条件
・さまざまな世代の方の入居を想定しています。入居者がどのような構成なのかを明記して提案してください。
・戸建て住宅の提案だけではなく、各住宅間の関係性など、区画内全体の提案をしてください。
・区画内における各住戸の敷地境界線は自由に提案してください。ただし、敷地面積150m2程度を守ってください。
・各住戸の駐車台数は1台以上とします。
・構造材(木造)や仕上げ材は、できるだけ地元の素材を考慮して提案してください。
・バリアフリーに配慮した設計をしてください。
・省エネと環境に配慮した設計をしてください。
・各住戸は「土地付き一戸建て住宅」として販売します。

伊予西条 糸プロジェクト 住宅設計コンペティション

愛媛県西条市は、海と山に囲まれた風光明媚な場所で、西日本最高峰の石鎚山を背景に、日本一美味しいといわれる水が湧き出る水の都でもあります。この西条市で新たなコンセプトのまちづくり「糸プロジェクト」が進められています。東京大学隈研吾研究室によるマスタープランを基に「エネルギー」、「テクノロジー」、「グリーンインフラ」、「食」、「建築」をキーワードとした実験的なフィールドが展開される予定で、ホテルやマルシェなどがある商業ゾーンと戸建て住宅で形成される住宅ゾーンが計画されています。この住宅ゾーンの90戸を対象に、若手建築家(39歳以下)のための活躍の場とすべくオープンコンペを開催します。90戸は9区画に分けられ、それぞれの区画の設計者を選定します。9組の設計者を選ぶコンペです。 実施を前提としたコンペティションですので、ぜひ、奮ってご参加ください。

※糸プロジェクト実行委員会:新たなコンセプトのまちづくり「糸プロジェクト」を推進するための組織。糸プロジェクト実行委員会の代表である山名正英氏は、22年前に愛媛県西条市で、同級生の首藤信生氏と株式会社アドバンテックを創業しました。自分の生まれ育った町であり、また、自分たちの事業を育ててくれた町「西条」に、昔のような賑わいを取り戻したいという山名社長の思いから「糸プロジェクト」は始まりました。それぞれの希望や思いを持って、ここに集まる人びとのための参加型プロジェクトで、今後立ち上げるウェブサイトで、随時、情報発信していく予定です。

隈研吾(くま・けんご)
東京大学教授

1954年神奈川県生まれ/1979年東京大学工学部建築学科大学院修了/1985〜1986年コロンビア大学客員研究員/1990年隈研吾建築都市設計事務所設立/2001~2009年慶應義塾大学教授/2008年KUMA & ASSOCIATES EUROPE設立(パリ、フランス)/2009年~東京大学教授

子供から高齢者までさまざまな人たちが永続して住めるまち、エネルギーも地産地消とするまちをつくりたいと思います。すぐ隣の商業エリアとも連携しながら、その場所で働いたり、子供を育てたり、その地域で人・モノ・経済がつながり、循環するサステナブルな街を目指しています。
今回のコンペはひとつの建物の設計ではなく、群としての設計であり、その集合体としてまちができあがります。また、コンペ区画は道を挟んで設定されています。住宅が個もしくは群として隔たりをもつのではなく、周辺とうまくつながっていくデザイン、コンセプトが大切になります。地方都市のどこにでもありそうな敷地ですが、注意深くまちを観察し、まちの特徴をとらえた、この場所でしかできない提案を求めます。
今回のコンペは、若手建築家9組を選び、さらにその案をすべて建設し販売するという、世界的に見ても例をみないコンペです。単に住む家ではなく、そのまちに住む人びとの営みを考えた案を期待しています。
 
 
乾久美子(いぬい・くみこ)
横浜国立大学大学院Y-GSA教授、乾久美子建築設計事務所主宰

1969年大阪府生まれ/1992年東京藝術大学美術学部建築科卒業/1996年イエール大学大学院建築学部修了/1996〜2000年青木淳建築計画事務所勤務/2000年乾久美子建築設計事務所設立/2011〜2016年東京藝術大学美術学部建築科准教授/2016年〜
横浜国立大学大学院Y-GSA教授

現地を拝見し関係者の方に話を聞き、プロジェクトの全貌をあらためて理解するにつれて、このコンペの珍しさ、稀有さに驚き、こんなプロジェクトが存在するのだと感動さえ覚えました。「糸プロジェクト」を立ち上げたアドバンテックという会社は不動産や建築に関係ないのですが、その方々が、まちづくりというものに飛び込んでいくことが素晴らしいと思っています。
だからか敷地の形もちょっと普通ではなくて、プロのデベロッパーはまず買わないだろうと思うのですが、西条市の中心地にぽっかり空いていた土地で、幹線道路に辛うじて面していて、中央に川も流れていてというように、周辺環境が整っています。そういう土地に可能性を見出したセンスのよさを感じました。不整形な土地だからこそ、いままでにない何かを生み出してくれるような潜在力を感じています。
応募者の方に期待したいことについてですが、美しい水や山と海に囲まれた環境など、西条市には魅力に溢れているので、とにかく自分の目で見て、足で歩いて、いろいろ調べ、西条市の可能性を体得した上で案をつくっていただきたいと思います。そうでなければ、このコンペに応えることはできないでしょう。また「糸プロジェクト」自体に、時間をかけてつくりあげるというコンセプトがあるので、提案も、作品性というよりは、粘り強い何か、未来をつくる何かを感じる力のこもった提案をしていただきたいと思います。
 
 
馬場正尊(ばば・まさたか)
東北芸術工科大学教授、Open A代表

1968年佐賀生まれ/1994年早稲田大学大学院建築学科修了/博報堂、 早稲田大学博士課程、雑誌『A』編集長を経て、2003年Open A設立/ 「東京R不動産」
運営/2008年〜年東北芸術工科大学准教授/2016年〜同大学教授

西条市というエリアの魅力と、日本中どこにでもありそうな複合宅地開発という、地域性と一般性の双方の接点にある興味深いコンペだと思います。
地域性については、自噴水の「うちぬき」があり、敷地中央を流れる御舟川(みふねがわ)もたいへんきれいです。南に石鎚山を望み、北に瀬戸内海を抱えて、美味しい食べ物もたくさんあります。そういう意味で西条市はとても魅力があるのに、街に入るとその魅力がバラバラに存在しているように感じて、ひとつの物語に見えない。それらを十分に編集すれば、街の人にも外部の人にもそのよさが伝わり、住宅のあり方も見えてくると思います。
敷地を見学したのは偶然にも西条祭りの日で、30軒の住戸で1個の「だんじり」を所有しているというシステムに驚きました。それが脈々と残っている西条市ならではのコミュニティをこの住宅地で継承してほしいです。
一般性でポイントになってくるのは、敷地境界の設定のあり方です。日本の住宅は塀が巡らされ、そこに自分中心の家が建つということが繰り返され、それが住宅地の風景を形成してきました。必ずしも僕らはそれをハッピーだと思っていないのではないでしょうか。このコンペでは、接道の問題、敷地の問題、隣棟との位置関係の問題、密度の問題などを見つめ直すことで、今までの日本の住宅地で見たことがない風景をつくることや、宅地開発のエポックになる可能性があります。皆さんの提案によって、そのブレイクスルーを発見できたら……、それを楽しみにしていますし、その端緒になるようなものを選びたいと思います。
 
 
馬郡文平(まごおり・ぶんぺい)
東京大学生産技術研究所特任講師

1965年東京都生まれ/1990年工学院大学工学研究科機械工学専攻修士修了/1990〜2009年竹中工務店設計部設他/2003〜2009年東京大学生産技術研究所野城研究室特任研究員/2006年FactorM設立/2009〜2011年同研究室産学官連携研究員/2012年東京大学建築学工学博士取得/2012年~東京大学生産技術研究所馬郡研究室特任講師

「糸プロジェクト」を立ち上げたアドバンテックの山名さんは、ご自身が若いときに、いろいろな方からのチャンスを生かし、会社を築くことができた、今度は、ご自分の生まれ育った街で、若い人にチャンスをつくり、それが街の人にも還元できるようなまちづくりをしたいとおっしゃいます。このコンセプトはとても素晴らしい。こうようなオープンなコンペは滅多にありません。
ですから、提案される方々には、きれいなものをつくるというよりも、敷地をしっかり読み込み、歴史、文化、社会性を織り込んだ提案をしてもらいたいと思います。周辺環境を見ると、とてもきれいな水があり、山と海が身近にあり、アドバンテックのソーラー発電で電気を賄うなど好条件がそろっているので、いろいろなものを味方につけて設計してほしいですし、設計を楽しんでもらいたいとも思います。
また、1棟ではなく、10棟をまとめて設計できるというのも、やりがいのあることだと思いますし、また、逆にいえば、建築家としての持てるすべての能力を発揮しなければならないものかもしれません。自らが築き上げてきたセンス、ヴォキャブラリー、技術を出せるだけ出して臨んでほしいと思います。どういう提案が出てくるのか非常に楽しみにしています。
 
 
山名正英(やまな・まさひで)
糸プロジェクト実行委員会代表、株式会社アドバンテック代表取締役社長

1960年愛媛県生まれ/証券会社などを経て、1995年株式会社アドバンテックを設立/国内外で半導体製造装置部品等の製造メーカーとしての実績を積みながら、環境事業にも着手し、再生可能エネルギーの発電所を全国で展開。そのネットワークを活かしながら、今後は地域再生、活性化を目指し、まちづくり事業をスタートする

この住宅地をコンペにしたのは、若い人、やる気のある人にチャンスがある街にしたいという思いがありました。また、プロジェクト名が「糸」ということで決まりました。「糸」には、つなぐ、編む、縒る(よる)など、人と人の関係や社会の関係など、関係性を彷彿させる意味合いがあります。家族のあり方、会社と従業員のあり方、地域のコミュニティと個人のあり方など、もう一度考え直す時期にきているということを含め、まちづくりをしたいと思いました。
住宅ということについては、当然住みやすいというのが一番ですが、外観だけきれいにつくって、10年もすると魅力を失ってしまうという家が最近多いように感じますので、長く住むというのを大前提にしていただければと思います。年数が経てば経つほど魅力を増すものになってくれたらうれしいです。
それから最後にひとつ。家というのは「帰るところである」という原点を考えてもらえればと思います。人生は山あり谷あり、私のようなおじさんでも、お母さんでも、子供でも、外に出れば嫌なことがたくさんあります。でも嫌なことがあったときに、「帰りたい」と思える家をつくってもらえれば有難いです。 みなさんの提案に期待しています。

西条市で実験的まちづくり/隈研吾氏が協力/若手建築家募りコンペ | 建設通信新聞

愛媛県西条市で、大規模まちづくり「伊予糸プロジェクト」が計画されている。地元企業などで構成する実行委員会が検討、建築家の隈研吾氏が協力している。東京大学隈研吾研究室が作成したマスタープランをベースに、▽エネルギー▽テクノロジー▽グリーンインフラ▽食▽建築--をキーワードとし、実験的なまちづくりを進める。
 同市朔日市の田園地帯約6万6500㎡に、分譲戸建て住宅100戸を建設する住宅エリア(3万1300㎡)とマルシェやホテルを整備する商業エリア(約3万5200㎡)で構成する。
 住宅エリアでは、90戸を対象に若手建築家(39歳以下)を対象として設計コンペを実施している。90戸を9区画に分け、9組の設計者を選定する。若手建築家が10戸ずつ設計することで、多様なまちなみを形成する。
 応募登録をコンペウェブサイトで行った後、3月6日まで作品を新建築社(電話03-6205-4830)で受け付ける。プレゼンテーションなどを経て、6月1日に結果を発表する。審査委員長は隈氏、審査委員は建築家の乾久美子氏らが務める。
 参加資格は、個人、グループを問わないが、代表者は1級建築士、2級建築士、木造建築士のいずれかの資格を求めている。住戸条件は、1戸当たり敷地面積150㎡、延べ床面積120㎡程度を見込む。給水は自噴する地下水「うちぬき」を使用するほか、構造材や仕上げ材はできる限り地元の素材を考慮した提案を求めている。10月下旬に設計を終え、2018年1月下旬から順次着工する。
 商業エリアでは、ホテルや温泉施設、地元食材を扱うマルシェや多目的スペースを設ける。さらに若者が働くインキュベーションセンターやシェアオフィスも整備する。

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