【食から考えるランドスケープ】
SFC AUDのみなさまこんにちは。Akiko Iidaさんからバトンをうけとりました、四国・瀬戸内でデザイナーをしている坂口祐です。
<今やっていること>
今年の5月に四国の仲間7人と「株式会社 四国食べる通信」を立ち上げ、実際の食材がついてくる情報誌のサービスをはじめました。DeAGOSTINIというオモチャがついてくる雑誌がありますが、食べる通信は、その食材版です。私はその冊子の農家さんの写真撮影と冊子の編集、六次産業化にむけたオリジナル・パッケージのデザインなどを担当しております。食べる通信という動きは、2013年に東北からはじまりました。東北からおこった動きが、いま日本各地に広がろうとしています。地方で暮らしていると常々感じるのは、これからの日本に必要なのは、移住合戦で少子高齢化で減っていく人口のパイを取り合うことではなくて、地域間連携を進めることが地域が生き残る戦略だということです。この食べる通信というしくみは、日本全国に各地の個性をいかしながら、しかし同じプラットフォームやノウハウを共有しながら広がっています。その第二弾として、西日本初の「四国食べる通信」を創刊し、5月(高知:カツオ、土佐しょうが、天日塩)・7月(香川:讃岐夢豚、ニンニク、瀬戸内の塩)・9月(徳島:スダチ、阿波尾鶏、塩麹)・11月(愛媛:島の青いレモン、ハチミツ、白いも)と食材とその物語をお届けしてきました。ちなみに1月号は、瀬戸内・粟島の牡蠣、徳島・上勝町の有機ゆこう、小豆島の木桶仕込のお醤油です。
四国食べる通信
http://taberu.me/shikoku/
今年の秋にこんなことがありました。秋田で自然栽培をされている菊池さんから「助けてください。一生のお願いです!」というメッセージが東北食べる通信の購読者グループに投稿されました。長雨で田んぼがぬかるんで機械での稲刈りが不可能となり、広大な田んぼを手で稲刈りしなくてはいけなくなったのだそうです。東京にいてもこのようなニュース、たまに新聞やテレビでみかけますよね。台風でりんごが全部落ちたとか、イノシシに農作物が全部やられたとか。でもほとんどの人が次の瞬間わすれて、日々の仕事に追われてしまいます。ところが、この食べる通信の読者は違いました。何十人もの人たちが仕事の合間をぬって駆けつけ、手での稲刈りを手伝い、応援したいという他の生産者さんからは手伝いに来た人たちに振る舞うための食材が届きました。
先日、僕らの先輩にあたる東北食べる通信がグッドデザイン賞で金賞を受賞したのですが、そこで評価されたのは単純に見た目がオシャレとかそういうことだけではなく、本質的には「CSA」という仕組みにあります。CSAとは「Community Supported Agriculture」の略です。消費者と生産者がつながることで、消費者は顔の見える安心安全な食材を手に入れる代わりに、天候不順によるリスクなども共有しながら農家の皆さんをしっかり支援するというものです。私達はこうして、消費者と生産者をつなげることで日本の食文化を次の世代に繋いでいきたいと考えています。冊子では、その地域特有の郷土料理や食文化や歴史、などについても触れています。そうした地域の物語をアーカイブすることも私達の使命だと思っています。
<SFC→ロンドン→四国>
さて、少しさかのぼって大学時代からのことをお話したいと思います。SFCには1999年に入学し、石川幹子先生や坂茂さんの研究室で建築設計やランドスケープデザインを勉強しておりました。大学一年の時から鹿内さんや稲葉くんとともに日本橋川などの都市河川の研究をし、江戸時代からの変遷や高架の高速道路を地下化した後のオープンスペースを設計していくかを提案してました。しかし、大学3年生の進路を考えるくらいの時から、モヤモヤとした気持ちが湧いてきました。「今、目の前にみているコンクリートに覆われたこの景色が本当に、自分の孫子に伝えたい風景だろうか」「ここに美意識があるのだろうか」という漠然とした気持ちです。そんな時、中学生の頃に父親と訪れた英国の田舎の小さな村のことを思い出しました。ピーターラビットの里とも言われるとても綺麗な川の流れる川です。ここで写真をとっていたら、村の老人が話しかけてきました。「お前この村のこと気に入ったか。このレンガのことを『Honey Brick(はちみつ色のレンガ)』っていうんだぞ。」ただの黄土色のレンガです。それをこんなにも嬉しそうに詩的に表現できるってなんて素敵なんだろうかと、子供心にとても印象にのこっていました。そんなことをふと思い出して、自分の住んでいる地域や国に誇りを持つってどういうことなのか知ってみたくなり、英国にスーツケースひとつもって留学しました。大学も家も決まっていない観光ビザで入国し、そこから大学の校長先生にメールし下手くそな英語で身振り手振りで自分が今までしてきたこととこれからしたいことを説明したら「お前は面白いやつだと」気に入ってもらえてなんとか入学し、家を探して、生活費を稼ぐために仕事をみつけ、大学の授業の合間にロンドン郊外やヨーロッパの小さな村などを訪ね写真を撮っていました。結局、大学は中退して日本に帰ることになるのですが、この時にしていたことが今、四国でしている活動の原点になっているように思います。このヨーロッパで過ごしたのべ3年間の苦労やままならないことの連続が、私を強くしてくれました。
<日本に帰国後、四国へ>
ロンドン大学で建築を学んだ後、日本に帰国、仕事を探していたときに偶然、Twitterで働き方研究家の西村佳哲さんが、経済産業省の四国経済産業局という組織がデザイナーを募集しているという書き込みを見つけました。その仕事はランドスケープや建築デザインの仕事ではありませんでしたが、地域に関わるものでした。四国各地をめぐりそこでの人々の営みを取材し「四国びと」というWebや広報誌を通じて紹介する仕事でした。「人が好きで、地域をめぐりそこで暮らす人々の営みを文章や写真で表現し、デザインができ、瀬戸内国際芸術祭もあるので英語ができる人がいいです」という書き込みをみて、勝手に「呼ばれている気がする」と思い、移住を決めました。
そして、2010年に高松にIターンで移住し、4年間 四国経済産業局の広報室で仕事をし、四国各地を巡るようになりました。組織ではたらくと厳しい上司もいて日々いろんなことと葛藤しながら働きました。唯一、この4年間で人に自慢できるのは無遅刻無欠勤で働いたということだけです。そして非常勤職員だったので副業ができたというポイントが私にとってはとても大きかったように思います。仕事で知ることのできた四国内の様々な地域の人々や文化に、休日は足繁く通うようになりました。そうした中で出会った美しい景色やお祭などの文化を日本語と拙い英語で綴ったブログを書くようになり、今は月間7万PV、世界127カ国の人が見てくださっていて、これからもっと充実させてビジネスとして仕組みをつくっているところで、今後も、コツコツと自分の足で歩いて・見て・聞いた物語を綴っていきたいと思います。
四国びと
http://www.shikoku.meti.go.jp/shikokubito/
物語を届けるしごと
https://yousakana.jp
4年間、国の仕事をしてそろそろ独立しようかなと考えていた折、渋谷のヒカリエで開催された「四国若者1000人会議」というイベントで登壇する機会があり、そこでいま四国や瀬戸内で起きていることをお話する機会がありました。そこに来ていたのが、東北食べる通信の高橋編集長とデザイナーの玉利くんです。その半年後に、四国食べる通信を四国の友人たちと立ち上げることになります。
TEDxTohoku 高橋博之編集長
http://youtu.be/s-iBTD67bgM
四国にきて出会った美しい里山・里海の美しい風景を見ていくと、必ずと言っていいほどそこの中心には、家族や集落の食の風景があります。そして、台風で石積みが崩れれば自分たちで積み直す人たちがいて、日々の当たり前の生活があります。時によそ者の価値観の押し付けになってしまう「地域活性」という言葉や価値観もそこでは、陳腐に思える瞬間が有ります。外からの視点を押し付けるのではなく、その地域に暮らす人々に寄り添い、そこにあたり前の日常として残っている文化の物語を記録し伝え、そこで作られている食材と一緒に消費者にお届けし彼らの感動の声を産地にフィードバックすることができたら、地域に暮らす人々が自分の地域のことを誇りに思い、さらには将来、自分の孫子の世代に美しい日本の文化や風景を残すことができるかもしれないと、大変おこがましいことかもしれませんが、思って四国食べる通信の仕事をしています。
新幹線もなく高速道路開発が遅れ、世界遺産もなく、少子高齢化が10年・20年も進んでいる四国だからこそ人知れず残されている多様な文化があります。私が移住してきてから4年の間に島や山で知り合ったお年寄りがどんどん亡くなっています。彼らが持っている生きる知恵が孫子に伝えられず消えていってしまっているのです。そうした文化を記録に残し、未来に届けることが私なりのランドスケープデザインだと考えています。最後に私が、デザイナーとして「物語を届けるしごと」をするにあたって心に繰り返している言葉を綴って終わりにしたいとおもいます。長文失礼いたしました。
「試みなければならないのは、山野のあいだに、ぽつりぽつりと光っているあのともしびたちと、心を通じ合うことだ。」(サン=テグジュペリ/人間の土地より)




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