広島県尾道市の瀬戸内海を望む小高い丘の上にある礼拝堂「リボンチャペル(Ribbon Chapel)」が、国際的な建築賞「リーフ賞(LEAF AWARDS 2015)の大賞(Overall Winner)」を受賞しました。設計は、中村拓志さん(Hiroshi Nakamura&NAP Co.,Ltd.)。単独では不安定な螺旋構造を二つ結びつけることで、互いに支えあい自立するようにつくられています。スパイラルを描きながら一つになる構造は、新郎新婦ひとつとなる結婚までの道のりを象徴しています。
This wedding chapel stands in a garden of a resort hotel, “Bella Vista Sakaigahama,” in Onomichi, Hiroshima. The site is midway on a hill enjoying a panoramic view of the Inland Sea of Japan. By entwining two spiral stairways, we realized a free-standing building of unprecedented composition and architecturally embodied the act of marriage in a pure form. A single spiral stairway would be unsteady in a horizontal direction and is prone to vibration in a vertical direction, hence, very unstable.(Ribbon Chapel by Hiroshi Nakamura & NAP Co)
2019年5月撮影
夜
2015年11月撮影
場所:広島県尾道市浦崎町1376 [Google Maps]
設計:中村拓志さん(株式会社NAP建築設計事務所)
運営:ベラビスタ スパ&マリーナ尾道
受賞:
日本商環境設計家協会 JCDデザイン賞2014 大賞
Wallpaper * Design Awards 2015 Best Chapel
第10回日本構造デザイン賞
LEAF AWARDS 2015 Overall Winner敷地は造船業を営む企業が経営するリゾートホテルの一角。瀬戸内海を臨む結婚式用のチャペルである。我々はこの建物に美しい島々を眺望するための展望台を設けることを提案。木登りをした人が木の幹からそっと頭を出して外の景色を覗き込むように、建築も木々の隙間から控えめに頭を出そうと考えた。形状は二本の階段によるダブルスパイラル。2つの鉄骨階段が脚となって建物を支え、階段同士はダンパージョイントによって揺れを吸収した上で、基礎は免震構造とした。その結果わずか直径100ミリの繊細な柱で支持することが可能となり、スパイラルリボンが自律的に上昇気流を描く外観となった。バネに似た形状のため、支保工を外すと40ミリ沈み込むことが予想されたが、それを計算に入れた設計がなされた。このような複雑な鉄骨架構は、造船職人たちの高度な技術によって実現可能となった。
別々にスタートした二本のリボンが、ゆったりと上昇スパイラルを描きながら一つになる様は、新郎新婦が晴れて一つになる結婚までの道のりを象徴している。実際、式の中で新郎新婦が別々のスパイラル階段を徐々に昇って最頂部で出会い、抱擁し、庭で見守る参列者から祝福されるという式典も想定している。我々は、このようなふるまいそのものをシンプルに建築化したのである。—
日本人の最高賞は2012年の藤本壮介氏以来、二度目となります。「Ribbon Chapel」は広島県尾道市のリゾートホテル「ベラビスタ スパ&マリーナ 尾道」にある礼拝堂で、主に結婚式用の教会として使われています。
リーフ賞は、ヨーロッパ主要建築家フォーラム(Leading European Architects Forum)の運営で、次世代の基準となる作品を評価し、建築デザインの発展を目的とする国際建築賞。■Ribbon Chapel
瀬戸内の島並みを360度見渡す小高い山の中腹に建つ礼拝堂です。単独の螺旋は左右にふらつき上下に振動する、きわめて不安定な存在ですが、二つの螺旋を結び付けることで、互いに支え合い自立する構造を生み出しています。二つの人生が紆余曲折を経てひとつになるように、二つの螺旋は頂部で滑らかに繋がり、一本のリボンとなります。中村拓志
1974年東京生まれ。神奈川県鎌倉市、石川県金沢市で少年時代を過ごす。1999年明治大学大学院理工学研究科博士前期課程修了。同年隈研吾建築都市設計事務所入所。2002年に株式会社NAP建築設計事務所を設立し、現在に至る。
建築をコミュニケーションデザインと考え、人が自然や建築と関わり、愛着を感じることをモットーに設計している。参考:国際建築賞「リーフ賞」最高賞を日本人建築家 中村拓志が受賞~受賞作品は広島県尾道市のリゾートホテル内の礼拝堂~|プレスリリース
Completion : 2013.12
Principal use : Chapel
Structure : S structure
Site area : 2500㎡
Total floor area : 80㎡
Building site : Hiroshima
Structure design : Ove Arup & Partners Ltd.
Contractor : P.S.Mitsubishi Construction Co.,Ltd.
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