日本に4つある後発酵茶のうち、富山の「ばたばた茶」以外の3つはなんと、四国にあります。愛媛の「石鎚黒茶(いしづちくろちゃ)」、徳島の「阿波番茶(あわばんちゃ)」、高知の「碁石茶(ごいしちゃ)」。それぞれ独自の製法と伝統を持ち、発酵に使われる乳酸菌や麹菌も異なります。この度、愛媛県西条市の石鎚黒茶などの発酵茶の製造技術が、「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」として選ばれる見通しとなりました。食文化に関する民俗技術が選ばれるのは全国初です。
国の文化審議会(馬渕明子会長)は19日、愛媛県西条市の石鎚黒茶を含む「四国山地の発酵茶の製造技術」を「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」に選択して後世に残すよう、宮田亮平文化庁長官に答申した。食文化に関する民俗技術が選択されるのは全国初。県内の選択事例は10件目で、「佐田岬半島の初盆行事」以来8年ぶり。3月に正式選択となる見通し
西条 「二段発酵」江戸期から伝承
石鎚山中腹にある西条市小松町の石鎚地区で江戸時代から伝承されてきた「石鎚黒茶」などの発酵茶の製造技術が、「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」に選択される見通しとなった。19日、国の文化審議会が文化庁長官に答申した。生産者らでつくる「石鎚黒茶振興協議会」事務局の県東予地方局は「石鎚黒茶は西条市に伝わる貴重な食文化。今後も関係者と連携し、製造技術の伝承や振興に努めたい」としている。(萩原大輔)
県教委などによると、答申されたのは「四国山地の発酵茶の製造技術」で、石鎚黒茶のほか、碁石茶(高知県大豊町)、阿波晩茶(徳島県上勝町、那賀町)が対象。かつては中四国の山間部で広く作られたとみられるが、現在は四国山地の一部地域でしか伝承されていない。茶の原産地に近いタイやミャンマーの山間部にも類似の製造技術があり、「古い技術を伝えていると考えられ、茶をめぐる食文化を考える上で注目される」という。
石鎚黒茶は、夏に刈り取った茶葉を蒸してから一度、微生物で発酵させた後、さらにおけで数週間漬け込む「二段発酵」を行う。独特の香りと酸味が特徴だ。
石鎚地区では自家消費のほか、登山客への接待にも使われ、瀬戸内海沿岸部にも流通していた。
しかし、昭和以降は過疎化などで生産者が減少。約20年前から、西条市内の女性らでつくる生活研究グループ「さつき会」が、食文化の伝承を目的に栽培、生産を始めた。現在は同会など市内の3団体が、計約6000平方メートルで栽培し、約350キロを生産。JR伊予西条駅前の市観光交流センター内にある市観光物産協会や、農産物直売所「周ちゃん広場」(丹原町池田)などで購入することができる。
答申されたことについて、さつき会の戸田久美代表(58)は「始めた頃は、このようなことになるとは思っていなかったので驚いている。製造作業は夏の暑い時期に行うので大変だが、それが報われた気持ち」と喜んでいる。
石鎚黒茶は西日本の最高峰石鎚山の北西の山深い地、愛媛県西条市小松町石鎚中村で古くから作られていた後発酵茶である。しかし生産する農家が1軒だけになってしまい、それを地元の生活研究グループが伝承したものが天狗黒茶として生産・販売されている。
石鎚黒茶は生産地周辺ではほとんど飲まれず、瀬戸内の船主たちに一括購入され、飲用に、茶粥用に、また漁網などの茶渋染めなどに用いられた。また塩分が混じりがちな瀬戸内地方の井戸水と黒茶は相性が良かった。しかし昭和30年代ごろから化学染料や水道が普及していくと黒茶の需要は減少した。
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