兵庫県姫路市安富町に残る「旧古井家住宅」は、15世紀・室町時代中後期に建てられた、日本最古級の古民家です。2026年、文化審議会は、神戸市の箱木家住宅とともに、民家として初めて国宝に指定するよう答申しました。
山間を流れる林田川沿いの高台に建つこの住宅は、入母屋造の茅葺屋根を持つ重厚な建築で、軒が低く、開口部が少ないなど、中世民家の特徴を色濃く残しています。内部は、正面に広い一室、その奥に生活空間を配した「前座敷型三間取り」という古い形式で、土間や茶の間などから当時の暮らしを感じることができます。古井家は、中世に農林業や交易を営んだ上層農家だったと考えられており、この住宅も周囲を見渡せる高台に建てられています。地域を守る役割も担っていたとされ、中世社会の暮らしや共同体の姿を今に伝える貴重な建築です。
また、この家には「無災の千年家」という呼び名があります。近隣で火災が起きても焼失を免れたと伝わり、家の中には「亀石」と呼ばれる大きな石も祀られています。豊臣秀吉が姫路城築城の際、その縁起にあやかって部材の一部を天守に使ったという伝承も残されています。戦乱や災害、時代の変化を乗り越え、600年近く同じ場所で生き続けてきた旧古井家住宅。そこには、日本の中世の暮らしと祈り、そして地域の記憶が静かに息づいています。
The ‘Former Furui Family Residence’, located in Yasutomi-cho, Himeji City, Hyogo Prefecture, is one of Japan’s oldest traditional houses, built during the mid-to-late 15th century, the Muromachi period. In 2026, the Cultural Properties Advisory Board recommended that it be designated a National Treasure—along with the Hakogi Family Residence in Kobe City—marking the first time a traditional house has received this status.
Perched on a hilltop along the Hayashida River, which flows through the mountains, this residence is a stately structure with a thatched hip-and-gable roof. It retains many of the distinctive features of medieval folk houses, such as low eaves and few openings. The interior follows an ancient layout known as the ‘maezashiki-style three-room plan’, featuring a large room at the front and living quarters set further back; visitors can gain a sense of life in those days through features such as the earthen floor and the tea room. The Furui family is believed to have been a wealthy farming family engaged in agriculture, forestry and trade during the medieval period, and this house is built on a hilltop offering views of the surrounding area. It is thought to have played a role in protecting the local community, and is a valuable architectural example that conveys the lifestyle and community structure of medieval society to the present day.
The house is also known as the ‘Millennium House of Safety’. It is said to have survived fires in the neighbourhood unscathed, and a large stone known as the ‘Turtle Stone’ is enshrined within the house. Legend has it that when Toyotomi Hideyoshi was building Himeji Castle, he used some of the stones from this house in the castle’s keep to draw on its good fortune. Having weathered wars, disasters and the changing times, the Former Furui Family Residence has stood in the same place for nearly 600 years. Within its walls, the daily life and prayers of medieval Japan, along with the memories of the local community, continue to live on quietly.
国宝・旧古井家住宅(千年家)
住所:兵庫県姫路市安富町皆河233-1 [Google Map]
日程:土曜・日曜・祝日(12月28日から翌年1月4日は除く)
時間:10:00-16:00
年代:室町後期
構造:茅葺入母屋造、(桁行13.9m、梁間8.1m)
間取り:にわ(土間)、うまや、おもて(座敷)、茶の間、なんど(寝室)
所有:姫路市
National Treasure: Former Furuie Residence (Sennen-ke)
Address: 233-1 Minakawa, Yasutomi-cho, Himeji City, Hyogo Prefecture [Google Map]
Opening days: Saturdays, Sundays and public holidays (excluding 28 December to 4 January)
Opening hours: 10:00–16:00
Period: Late Muromachi period
Structure: Thatched hip-and-gable roof (frontage 13.9 m, depth 8.1 m)
Layout: Niwa (earth-floored room), Umaya (stable), Omote (formal sitting room), Chanoma (tea room), Nando (bedroom)
Owned by: Himeji City
2026/05/24
入母屋造の茅葺屋根を持つ重厚な建築。
軒が低く、開口部が少ないなど、中世民家の特徴を色濃く残しています。
竈(かまど)
古井家住宅の正面の部屋には「亀石」と呼ばれる大石が祀られており、近隣の 伊和神社 の主神・大己貴命への信仰に関わる祭祀の場だったという説があります。また、「無災の亀石」とも呼ばれ、豊臣秀吉が姫路城築城の際、「無災の千年家」と伝え聞き、この家の部材を天守に用いたという伝承も残されています。
山間を流れる林田川沿いの高台に建つ住宅。周囲を見渡せる高台に建てられています。地域を守る役割も担っていたとされています。
室町末期のものとされ、民家としては全国的にも古い遺構であり、「千年家」とも呼ばれる。床下には亀石という大きな石があり、厄除けとして祀られている。この石には幾度かの火難の際に水を噴出して家を守ったという伝説がある。
旧古井家住宅は、姫路市北西部の安富町皆河にあり、山間部を南流する林田川西側の高台に建つ民家。15 世紀(室町時代中後期)に建設された、我が国現存最古級の古民家で、顕著な古式を示しており、我が国の中世民家史を考える上で欠くことができない重要な遺構である。中世の上層民家の生活を紐解くうえで貴重であり、中世の景観を伝える民家建築として深い文化史的意義を有する。箱木家住宅(兵庫県神戸市北区山田町)とともに、民家として初の国宝となる。
解説
旧古井家住宅は、中世に名主であったと伝わる旧家、古井家が、15 世紀に当地に居を構えて以来、「皆河の千年家」として現在に至るまで維持されてきた。古井家の由緒は詳らかではないが、天保7年(1836)に記された「播州皆河邨千年家之記」に、家を建てる際に裏山から転び入った大石が万年無災の亀石といわれていること、天正9年(1581)に羽柴秀吉が姫路城を築城した際、この旧古井家住宅が「無災の千年家」と聞き、家の垂木を天守に加えたといわれていること、過去に2度、近隣で火災があったが、いずれも焼失を免れたこと等が記されており、天保の頃には既に古い民家と認識されていたことがわかる。 1 旧古井家住宅は、南を正面として建つ入母屋造り、茅葺きの民家建築で、大壁造りの外壁は開口が小さく、閉鎖的な外観をみせる。内部は、向かって右手側(東側)をニワ(土間)、左手側(西側)を居室部とし、ニワの南東隅にウマヤを設ける。居室部は正面側に1室(オモテ)、背面側に2室(チャノマ、ナンド)を並べた「前座敷型三間取」の形式で、近畿地方の近世民家が示す平面の祖型の一つとされる。明快な寸法計画のもと、一間毎に柱を立てる整然とした柱配置で、省略がないため室内等に独立柱が現れる。断面が不整形な柱は室内から見えやすい面のみ丁寧に仕上げ、上屋梁は扁平な角形で細く、貫は分厚く造り、架構は古式を示す。 中世に遡る極めて稀少な現存最古級の民家で、中世民家史を考える上で不可欠な遺構である。建設以来、悠久の時を経てなお変わらぬ場所と環境で維持されてきた点も特筆される。我が国中世の上層民の生活を紐解く上で極めて貴重な遺構であり、中世の景観を伝える民家建築として極めて深い文化史的意義を有している。保存の経緯
旧古井家住宅は、昭和42年(1967)6月15日に国重要文化財に指定され、引き続き古井家が維持管理を行ってきたが、平成11年(1999)には旧安富町の所有となり、さらに平成18年(2006)の市町村合併により姫路市の所有となった。 昭和 44~45 年(1969~1970)の半解体修理により現在の姿に復原され、平成9年(1997)には屋根葺替え等の修理が行われた。平成12 年(2000)には、旧安富町が敷地を「千年家公園」として整備し、一般公開を開始した。今後、耐震診断実施後、屋根葺替え部分修理を行う予定。※用語解説
名主(みょうしゅ):中世の荘園・公領において、年貢の賦課単位である名田(みょうでん)を支配・経営し、年貢などの納入責任を負った有力百姓。近世の名主(なぬし。西日本では庄屋と呼ばれることが多い。)とは異なる。播州皆河邨千年家之記 (ばんしゅうみなごむらせんねんやのき):安志藩の祐筆(ゆうひつ。文書の作成や記録の整理を担う役職)であった丸山政煕(まさひろ)が、古井家に関する伝承をまとめた文書。安志藩は、江戸時代に安富町周辺を治め、安富町安志に陣屋を置いた藩。
亀石(かめいし):古井家住宅を建てる際、裏山より転がり込んだと伝える大石で、二度川に捨てるも夜中に戻って来たと「播州皆河邨千年家之記」にある。現在も厄除けの石として「オモテ」にまつられている。大己貴命(おおなむちのみこと。別名、大国主命など)にまつわるとされ、火災の際には水を噴いて家を守るとされる。
垂木(たるき):屋根の棟(頂部)から軒先に向かって斜めに取り付け、屋根の下地を支える部材。旧古井家住宅では、太めの丸太が用いられている。
入母屋造(いりもやづくり) :上部を切妻造(前後2方向に勾配をもつ)、下部を寄棟造(前後左右4方向に勾配をもつ)の屋根とした建物の形式。
大壁造り(おおかべづくり) :柱などを外から見せず、壁全体を仕上げ材で覆う工法。柱などを見せて柱の間に壁を設ける工法は真壁造り(しんかべづくり)という。
前座敷型三間取(まえざしきがたみまどり) :居室を3室に区切る平面を「三間取」と言い、正面側(表側)を広い1室としたものを「前座敷型」、土間側を広い1室としたものを「広間型」と呼ぶ。4室が田の字型に並ぶ「四間取(よつまどり)」は、この三間取平面が発展したものと考えられている。
古井家住宅(ふるいけじゅうたく)は、兵庫県姫路市にある古民家。「古井千年家」の通称をもつ。室町時代後期の建築と推定され、国の重要文化財に指定され、国宝への指定が答申されている(官報告示を経て正式指定となる)。現在は「千年家公園」として一般公開されている。
室町時代後期の建築と推定されている。1967年(昭和42年)までは畳を内部にしいて間仕切りなどをされ、実際に住居として使用されていたが、解体修理のために建築当初の形にしたことから住居としては使えなくなり、市が買い取ったうえで一般公開されている。
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