久本古墳は、横穴式石室をもつ円墳である石室全長10.8mで、遺体を埋納する玄室は長さ4.5m、高さ3.3m、通路にあたる羨道部は、長さ6.3m、高さ2.1mです。北方の山下古墳とともに巨大な横穴式石室を持つ巨石墳です。周辺に大きな勢力と高度な文化を持った集団が存在したと考えられています。
玄室奥に、香川県内唯一の石棚がみられます。棚の下には、遺体を安置する陶棺が置かれていました。石棚は、和歌山県・徳島県の古墳で多く見られ、広範囲にわたる文化交流が伺えます。仏教文化の影響が色濃い承台付銅鏡が、香川県下で初めて出土しています。須恵器(すえき)が多量に副葬されており、古墳が6世紀末に築造され、7世紀初頭まで追葬が行われていることが判明しています。
久本古墳には「祭礼などのとき、塚が膳・椀を貸してくれていたが、村人が壊すなどの不始末を起こし返さなかった後は、塚はもはや膳・椀を貸してくれなくなった」という椀貸しの伝説が伝えられています。
久本古墳
指定:高松市史跡 1975(昭和50)年3月13日
住所:香川県高松市新田町甲 [GoogleMap]
Hisamoto Ancient Tomb
Designted : Historic site designated by the Takamatsu city / 13th March 1975
Address : Shindencho, Takamatsu city, Kagawa pref., Japan [GoogleMap]
石棚
光が差し込んできて綺麗
こんな巨石をどうやって積み上げたのだろう
屋島が遠くにみえます。古代の人達も屋島を眺めていたのでしょうか。
墳丘の盛土はかなり流出してしまっているが、直径36メートル、周溝を含めた直径は46メートルを測る円墳であることが判明している。石室は全長10.8メートル、玄室長4.6メートル、幅2.6メートル、高さ3.5メートル、羨道長6.2メートル、幅1.6メートル、高さ2メートルを測る両袖式の横穴石室で、奥壁には石棚が付いている。この石棚の直下の奥壁に沿って土師質の亀甲型陶棺が納められていた。副葬品には、須恵器、土師器、鉄鏃のほか、承盤(しょうばん)付銅椀があり、6世紀末から7世紀初頭頃に築造されたと考えられる。
石棚付石室、土師質亀甲型陶棺、承盤付銅椀はいずれも県内唯一のものである。石棚付石室は和歌山県や九州北部に多く分布するものであり、その伝播には紀氏およびその同族関係氏族との関連性が関わったとする説がある。また、土師質亀甲型陶棺は奈良県に類例があり、久本古墳の陶棺も奈良県からの搬入品である可能性が高い。本来仏具として使用される貴重な銅椀を有することからも大和朝廷との関係も注目される。
なお、「村の祭事には塚(古墳)が膳や椀を貸してくれたが、あるとき村人が借りた膳椀を返さなかったところ、以後貸してくれなくなった」という民話が残っており、地元では「椀貸塚」とも呼ばれている。
コメントを残す