日本全国に獅子舞文化は残っていますが、日本一小さな香川県には日本一多くの獅子組が今も残っています。現存している獅子舞の数は、約800組。神社ごとの獅子組が集落ごとに派生して、かつては1,200組もの獅子が奉納されていたと言われています。香川県の獅子舞の季節は秋。五穀豊穣を願って地域ごとの神社に獅子舞が奉納されています。獅子舞を見るときに、注目したいのが獅子の胴布である油単ゆたん。戦国時代の勝ち武者や龍虎など、強く縁起のいいモチーフが高価な絹に描かれているのも香川県ならでは。(Experience Takamatsu)
Lion dance culture remains throughout Japan, but Kagawa Prefecture, the smallest prefecture in Japan, still has the largest number of lion dance groups in Japan. The number of existing lion dance troupes is approximately 800. It is said that lion dance groups at each shrine were derived from each village, and that as many as 1,200 lion dance groups were once dedicated. The lion dance season in Kagawa Prefecture is autumn. Lion dances are dedicated to shrines in each region in the hope of a good harvest. When watching the lion dance, it is worth noting the yutan, the lion’s body cloth. Strong and auspicious motifs such as victorious warriors and dragons and tigers from the Warring States period are painted on the expensive silk, which is unique to Kagawa Prefecture.
香川県は「獅子舞王国」。現存している獅子舞の数が800組と国内有数の獅子舞王国です。香川県各地の獅子舞が一同に介する大規模なお祭りが香川県高松市で開催されます。秋祭りの時期に各神社でほぼ同時期に舞うため、基本的に他の地域の獅子舞と出会うことはありませんでした。2013年に讃岐獅子舞保存会が結成され、『獅子舞王国さぬき』がはじまりました。全国的に見てもこうした各地の獅子舞が一同に介し、交流する獅子舞にはじまり、獅子舞におわる大規模なお祭りはとても珍しいです。
Today, 800 shishimai teams remain active. Visit the land of shishimai, the traditional lion dance that has undergone a unique evolution. Shishimai is said to have been introduced from China and India to Japan.There is a culture of shishimai around the country, but Kagawa, the smallest prefecture in Japan, has the largest number of shishimai teams (shishigumi).It has an outstanding concentration of shishimai performers. We explored the reason why.
In fall, trees change color and the aroma of fragrant olives wafts through the air. The sound of drums and bells are heard here and there in Kagawa.
Shishimai is known as a New Year’s event. In Kagawa, shishimai is associated with fall,dedicated to local shrines wishing for peace and bumper crops. Shrine-based shishimai teams formed in each village and are said to have peaked at 1,200 teams.
“Currently, we have about 800 teams, but they completely differ among shrines and communities,” said Mitsuru Sogo, chairman of the Sanuki Shishimai Hozonkai (Shishimai Preservation Society). (Experience Takamtsu)
Shishimai is traditional dance performed by one or more dancers wearing a guardian lion costume. Kagawa pref. has the most Shishimai (about 800 shishimai) in Japan.
2018年9月撮影
2018年11月4日 イベントレポート
讃岐獅子舞保存会会長 十川みつるさん
毛獅子
古流。太鼓の音が響く。
親子獅子
子ども獅子舞
多様性豊かな獅子舞。すべての獅子に個性があります。
中央公園の紅葉が見頃。
下法西獅子
紅葉する木々の下で各地の獅子が舞います。
すごい人
一斉演舞
香川県東かがわ市白鳥神社の虎獅子
夫婦(めおと)獅子
烏天狗(からすてんぐ)
—-
秋祭りは獅子の晴れ舞台
9月下旬から11月上旬が香川の秋祭りのシーズン。県内各地の神社で獅子舞が奉納され、誰でも自由に観覧できる。宵祭りと翌日の本祭りで獅子が舞う神社が多く、たくさんの獅子が集まるにぎやかな祭り、落ち着いた厳粛な祭りと、雰囲気はそれぞれ。さらに祭りのひと月ほど前から、獅子舞が氏子の家々や、商店・企業を回る地域もあり、思わぬ場所で出くわすことがある。
一つの獅子組は、15~20人ほどの編成。昔は男衆のものだったが、現代は女性がいる獅子組も多くなった。技術の伝承は、ひと昔前までは慣行として「口伝え」だったが、最近は録画して、保存・継承と技術向上を目指す組が増えている。鳴り物からスタートし、習熟度が高まると、獅子遣いの後ろ足から頭へと出世する。タイコウチやキョウクチとして幼い頃から獅子組に参加し、一生、獅子舞に携わる人は多い。
地域と組の名誉にかけて獅子に熱くなる人たちを、昔から愛情を込めて「獅子ぼっこ(獅子ばかの意味)」と呼ぶ香川。秋祭りは、獅子と獅子ぼっこたちの晴れ舞台となる。
<伝統を守る5つの獅子舞>
県指定無形民俗文化財・虎頭舞(とらがしらのまい/東かがわ市白鳥)
白鳥神社
香川県では珍しい虎獅子。国性爺合戦にちなみ和藤内が虎退治・吉津夫婦獅子舞(よしづみょうとししまい/三豊市三野町吉津)
八柱神社
四つの組による獅子舞。約400年前の寛永年間伝来とされる・家浦二頭獅子舞(いえのうらにとうししまい/三豊市仁尾町家の浦)
船越八幡神社
大将軍神社
県内に多く伝わる二頭獅子の中でも、歴史ある代表格の夫婦獅子・尺経獅子舞(しゃっきょうししまい/東かがわ市川東)
誉田八幡神社(横内)
能楽の「石橋」をもとに舞いを作った、雌雄の二頭獅子舞・綾南親子獅子舞(りょうなんのおやこししまい/綾歌郡綾川町)
春日神社
畑田八幡宮
情愛を表す親子の二頭獅子。二つの獅子組が別の神社に奉納
秋祭りは獅子競演の場
香川県の獅子舞がいつ始まったかは、地域によって言い伝えが異なり定かではないが、近世から近代にかけて盛んになったようだ。昔の神社には、今でいう自治会のような氏子の集落が複数所属し、秋祭りには毎年交代で、神社が所有する獅子で舞を奉納した。ところが、農村の暮らしにゆとりが出ると、「わが集落の獅子を」と、獅子頭や、香川では油単ゆたんと呼ばれる胴部の布を独自に仕立て始め、秋祭りは、各集落の獅子による競演の場となった。その結果、最大で1200組もの獅子組が生まれたといわれ、現在でも全国屈指の約800組が存在している。悪魔払い、豊作祈願の民俗芸能
獅子は、悪魔払いの呪力を持つ架空の動物、インドのライオンがモデルとされる。獅子舞は、7世紀初頭に中国からわが国へ伎楽ぎがくの一部として伝来し、大社寺の法要で舞われた。中世以降は、後に伝来した舞楽ぶがくの獅子舞とともに地方の社寺にも波及。民間の芸能にも取り込まれ、次第に、悪魔払いだけでなく、豊作、延命の祈願としても舞うようになった。明治以降は神社を中心に奉納され、各集落で盛んに獅子舞を習い、娯楽色もある民俗芸能となっていく。香川の獅子舞の隆盛は、その典型といえる。油単と鉦で目に耳に派手やか
初めて香川の獅子舞を見る人は、まず鮮やかな獅子の胴に目を見張る。極彩色の武者絵の油単は、それだけで芸術的な見応えがある。独特の音色ではやすのは鉦。カンカンと甲高い音は、はるか遠くまで心地よく響く。しかし何より大きな特徴は、その数と多彩さだ。秋祭りでは、今もいくつもの獅子が舞い、姿も舞い方も多種多様。県の、東部・中部・西部という地域的な特徴に加え、集落ごとにも異なりバラエティーに富んでいる。伝承のされ方もさまざまで、昔の舞に重きを置く組も、時代と共に新味を求め変わっていく組もあり、それぞれが「われらが獅子舞」を慈しみ、過去から未来へと受け継ぐことに懸命だ。
あまりに身近にあり過ぎたためか、地元は獅子舞の価値を見逃しがちであった。しかし、全国的な獅子舞の交流会や、2016年の瀬戸内国際芸術祭で、国内外から予想外の高い評価を受け、誇るべき民俗芸能という意識が高まった。その結果、各地の獅子組が活性化し、より面白みが増している。見るなら今の、香川の獅子舞。旅人がふらりと立ち寄れる、気取りのなさもいい。
コメントを残す