今週末、兵庫県立芸術文化センターで「春琴(しゅんきん)」という舞台があります。
谷崎潤一郎さんの「春琴抄(しゅんきんしょう)」という小説をモチーフにした、
サイモン・マクバーニーさん演出、深津絵里さん主演の舞台です。これとってもオススメ。
お芝居ってあまり得意ではなかった私が、演劇というものを、
特に舞台美術という仕事においてとてもモチベーション高く関われたのは、
このサイモン・マクバーニーという演出家の作品との出会いがあったからです。
それくらい、空間や映像、役者の身体の使い方が素晴らしいです。
サイモンさんの舞台は、英国の演出家でありながら、
谷崎さんの「陰影礼賛」に見られるような日本古来の「闇」に対する造詣の深さを伺わせます。
Shunkin will taken place in this weekend at Hyogo Performing Arts Center. The original piece was written by Junichiro Tanizaki. This stage is an adaptation of a Tanizaki’s nobel “Shunkin-sho”. The theater director is british director Simon McBurney who is called “genius of stage”.
「春琴」 – 毎日新聞
作:谷崎潤一郎
演出:サイモン・マクバーニー
出演:深津絵里 / 成河 / 笈田ヨシ / 立石涼子 / 内田淳子 / 麻生花帆 / 望月康代 / 瑞木健太郎 / 高田恵篤 / 本條秀太郎(三味線)日程:2013年7月27日(土) 13:00 / 18:00
場所:兵庫県立芸術文化センター KOBELCO 大ホール
連絡:チケットオフィス (0798-68-0255)
“Shunkin” – mainichi news
original piece : Junichiro Tanizaki
staging : Simon McBurney
cast : Eri Fukatsu / songha / Yoshi Oida / Ryoko Tateishi / Junko Uchida / Kaho Aso / Yasuyo Mochiduki / Kentaro Mizuki / Keitoku Takata / Hidetaro Honjo (shamisen)Date : 13:00 / 18:00 27th July 2013
Place : KOBELCO Hyogo Performing Arts Center
Tel : 0798-68-0255
谷崎潤一郎 – Wikipedia
1886年(明治19年) 7月24日東京市日本橋区蛎殻町に生る。父谷崎倉五郎、母関の長男。
1932年(昭和7年) 兵庫に転居する。隣家は根津松子一家だった。『倚松庵随筆』『蘆刈』を発表。
1933年(昭和8年) 丁未子と別居する。弟精二と絶交。『春琴抄』『陰翳禮讚』を発表。
下記、以前公演をみにいった後のメモ書きです。
ずっと心待ちにしてた舞台、コンプリシテの「春琴」をみてきました。
一言で言うと、本当にすばらしかった。
ロンドンの千秋楽はまもなく、日本での公演は3月5日から。
まだ見てない方、演劇はちょっと苦手だなという方もぜひ。
今回、”Elephant Vanish” や “A Disappearing Number”のような
大がかりな装置をつかった場転はそれほど多くはなく、
畳や棒、映像をつかった演出がうまくいっていた。
具体的な舞台構成はまた今度メモします。雑メモ。
・錆がかった巨大な壁が舞台際までせまっている
・巨大な壁がゆっくりスライドバック
・春琴抄のナレーション録り と 物語の中 のパラレルモンタージュ
・扉の向こう側に自動販売機の強く白い光 (物語の昔の暗い灯りとの対比)
・畳と棒、人形 など小道具をつかった舞台展開
・畳を移動させながら通路や狭い部屋など、めまぐるしく展開
・棒を立体的に移動しながら部屋の入口や入り組んだ通路を表現
・棒を三味線や鞭に見立てる
・体をさわった瞬間、三味線をくみたてる瞬間に鈍重な効果音
・壁一面の映像をつかった演出
・着物が上に吊られていく、映像とシンクロ
・鳥をかごから放つ、映像とシンクロ
・人形浄瑠璃 成長を表現 途中本物の人間
・足を絡めるシーンで、人形の足だけ使う
・物語が終わる頃、ナレーションの女性がイスと机がスライドして舞台前面にでてくる
・壁がスライドアップして役者が壁向こうの光の中に消えていく
・暗闇に目をむけるという陰翳礼讃を暗示
春琴 in ロンドン
Shun-kin | Complicite / Simon McBurney
日程:2009年01月30日~02月21日
時間:19:45 / 14:30
場所:Barbican Theatre ロンドン
料金: £10~40
春琴 in 東京
コンプリシテ サイモン・マクバーニー
日程:2009年03月05日(木)~16日(月)
場所:世田谷パブリックシアター
料金:一般S席7,500円/A席5,000円/B席3,000円
春琴 – 谷崎潤一郎「春琴抄」「陰翳礼讃」より
鬼才サイモン・マクバーニーが紡ぎ出す21世紀の谷崎ワールド。
早くも世田谷パブリックシアターで再演が決定!
サイモン・マクバーニーが演出して、08年春に初演された『春琴』が早くも再演される。まずロンドンで、そして東京で。出演者全員が何役も演じる中で、主に春琴役を演じたのは深津絵里さん。初めてのサイモン作品で大きな手ごたえを感じたようだ。ロンドンでの稽古に旅立つ前に、お話を聞いた。
――サイモンさんの芝居創りは、ワークショップを重ねていくような感じだと思うのですが、初めて体験されて、いかがでしたか?
とにかく大変だという噂を聞いていたので、免疫ができていました(笑)。だから、それほど苦しいと思うことはありませんでした。むしろ楽しかったですね。「こんな作り方があるんだ」という驚きのほうが強くて。普通は最初に台本がありますが、サイモンは違いました。谷崎潤一郎の小説を、とにかく分析して深く掘り下げていくことから始まりました。「これは、台詞も皆で創るんだ」と、衝撃が(笑)。でも、正解がない分、どんなことをやっても何かにつながっていく嬉しさとか、形になっていく喜びがとても新鮮でした。
――全員で創るんですね。
毎日、いろいろなアイデアを持って稽古場へ来るんですね。皆の頭がフル回転しているのを感じていました。上手く進まない日もあるんですけれど、それにもちゃんと意味があるし、そこはサイモンが突破口を見つけてくれます。やらされている感覚がなくて、皆でつなげていく作業はとても勉強になったし、贅沢な時間を過ごしたなと思います。
――具体的にはどんな作業をしていたのですか?
例えば、最初のころは、グループに分かれて、小説の一部を演じてみることをやりました。グループによって、表現の仕方が違うので、見ていてすごく面白いんです。多分、サイモンも自分だけの考えではなくて、日本の文化ですし、私たち日本人がどう感じて、どう表現するか見たかったのだと思います。それをとても尊重してくれました。逆に、サイモンの解釈に、こちらが驚くこともあり、両方がうまく融合されたのではないかと思っています。
――途中まで春琴は人形で表現されています。深津さんも初めは人形を使っていましたが、大変ではなかったですか?
稽古が始まって間もない頃、突然、「人形の先生が来るから、一緒にワークショップをしてね」と言われて。誰もそんなこと聞いてなかったので、びっくりしたんですけど、とにかく丸二日間くらい猛特訓を受けました(笑)。だけど、それきり人形とは何の関わりもなく、結局人形を使うと決まったのも、けっこう後になってからでした。
――完成形がなくて、日々変化していくのがサイモン作品の特徴ですが、まさにそうだったんですね。
公演が始まってからも変化しましたし、サイモンは初日にお客様に挨拶した時も「これはまだ創っている過程だから、お客様も一緒にそれを楽しんで、その過程に参加してほしい」と言っていて。ずるいですね(笑)。でも、確かに、生きている人間がやっているのだから、変化して当たり前ですよね。だから、本番で感じるプレッシャーが全くなくて、今まで演じていた気持とは違う感覚でした。本当に何もないところからスタートしている感じがして。皆で手を取り合って創ったという気持ちがそうさせているのか、不思議な感覚。毎日、即興のようなことをしていたので、何があっても大丈夫と思えるのかもしれせん。サイモンと作業をしたことで、何でもできないことはないと思えるというか、逞しくなれた気がします。
――印象に残っているサイモンの言葉はありますか?
いろいろありますが、「舞台袖に隠れないで、常に舞台上にいてくれ」と言われたことです。ずっと生きている存在として、その場にいてほしいということなんですが。そこにいる根拠を自分で考えなければいけないんですね。自分の役が終わったから終わりではなくて、自分でできることを見つけてやるということが、新鮮でした。
――春琴という役については、どう考えていらっしゃいますか?
春琴はどういう人物なのか、佐助はどういう人物なのかということも、皆で分析しながらやっていたので、春琴という役を客観的な目でとらえていた気がします。それは人形を動かす上でも役に立ちました。
春琴は、とても複雑な役だと思うんですね。生い立ちもそうですし、とても孤独でミステリアスな女性で。いかにも「演じます」というやり方では面白くならないかもしれないと、創っていて思いました。サイモンの演出の素晴らしさを改めて感じました。
――再演に向けての心の準備はいかがですか?
「再演」ということ自体が私は初めてのことなので、自分がどうなるのか楽しみです。
キャストが少し変わりますし、きっとサイモンは初演と違うことをやるはず(笑)。私もまた新しいものを創る気持ちです。ロンドン公演も初めてなので、どうなるのか、まだピンと来ない(笑)。でも良いものにできるように頑張りたいと思います。
2008年12月 聞き手:沢美也子 – 世田谷パブリックシアター
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