広島県広島市中区にある清掃工場『広島市環境局中工場』。丹下健三さんが計画した広島平和公園内の原爆ドーム・原爆死没者慰霊碑・広島平和記念資料館の「平和の軸線」が貫通し、海に抜ける通路となっています。建物の外観や2階のエコリアムなどは、自由に見学できます。設計は、MIMOCA(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館)、香川県立東山魁夷せとうち美術館 、MOMA(ニューヨーク近代美術館)などを設計し、丹下さんの弟子でもある建築家、谷口吉生さん。BCS賞、公共建築賞受賞。

The ‘Hiroshima City Environment Bureau Naka Plant’, a cleaning plant located in Naka Ward, Hiroshima City, Hiroshima Prefecture. The ‘Axis of Peace’, planned by Kenzo Tange, runs through the Atomic Bomb Dome, Cenotaph for the Atomic Bomb Victims and Hiroshima Peace Memorial Museum in Hiroshima Peace Park, and serves as a passageway to the sea. The exterior of the building and the ecorium on the second floor can be visited freely. Designed by architect Yoshio Taniguchi, a pupil of Tange and designer of MIMOCA (Marugame Genichiro Inokuma Museum of Contemporary Art), Kagawa Higashiyama Kaii Setouchi Art Museum and MOMA (Museum of Modern Art, New York), etc. Awarded BCS Prize and Public Architecture Prize.

広島市環境局中工場
住所:広島県広島市中区南吉島1-5-1 [Google Map]
電話:082-249-8517(代表)
設計:谷口吉生
竣工:2004年2月
時間:9:00〜16:30(申込不要/自由見学可能)
見学:中工場の施設見学方法

Hiroshima City Environment Bureau Nakago Plant
Address: 1-5-1 Minami-Yoshima, Naka-ku, Hiroshima City, Hiroshima Prefecture
Tel: 082-249-8517 (representative)
Designed by: Yoshio Taniguchi
Completed: Feb 2004
Time: 9:00-16:30 (no application required/free to visit)
Visit : Naka Incineration Plant Tour(Hiroshima city)


工場と吉島通り、平和公園の主要施設および平和大通り。平和公園の主要施設は平和大通りを東西の軸線として直交するように南北の軸線上に配置されている。また現代広島市の主要道路は平和大通りを基準に碁盤目状に整備されている。そのため吉島通りは平和の軸線を意識した線形になる。(Wikipedia

2023年04月04日

普通は都市の隅っこに追いやられるゴミ処理場。場合によっては都市の外部に追いやることで、生活者からすると自分たちが捨てたゴミがどこに行くのか目に見えないことが多いです。そのゴミ処理場を、平和記念公園の平和の軸線の延長線上に起き、外部の人が自由に見学できる通路を貫通させた建築の発想が素晴らしい。


広島市の清掃事業の歴史


軸線に沿ってガラスの廊下が貫通しています。


ecorium(エコリウム)


展望デッキから海辺の広場に降りることができます。


展望デッキ


桜。5枚の花びらが一緒になって落ちる

Naka Incineration Plant Tour – Hiroshima city

Incorporating cutting-edge technology in waste incineration, the Naka Incineration Plant, designed by world-renowned architect Yoshio Taniguchi, completely redefines the concept of waste disposal. Visitors are free to walk the grounds of the incineration plant and access the 2nd floor Ecorium. However, a tour of the facility itself will require advance reservations.  Those interested in architecture are also more than welcome to visit.

Architectural Tour
※Self-guided tour

Tour content: Visitors can view the outside of the building from the green belt that surrounds the plant, and walk through the 2nd floor Ecorium, the glass walkway running through the middle of the plant.
Tour availability: Every day
*Not available from December 29 through January 3. Please note that in times of extreme weather, the 2nd floor Ecorium may be closed for safety reasons.
Hours: 9:00 am to 4:30 pm. Reservations are not necessary for a self-guided tour.

広島市環境局中工場 – Wikipedia

広島市環境局中工場(ひろしましかんきょうきょくなかこうじょう)は、広島県広島市中区にある清掃工場。

かつて同地にあった清掃工場が、老朽化に伴い2004年に建て替えられた[4]。ネガティブなイメージに捉えられやすいゴミ処理場を、美術館のような見せる造りにしてポジティブな方向へ活かした作品。2005年BCS賞、2008年公共建築賞受賞。

・焼却設備 : 全連続燃焼式ごみ焼却炉(24時間連続燃焼式ストーカ炉)×3基
・焼却能力 : 600t/日(200t/日×3基)
・発電能力 : 15,200kW

旧工場は処理能力400t/日であったが建て替えにより処理能力を向上させた。高温完全焼却を自動化運転で行っている。有害物質を除去し、騒音・悪臭を外部に出さないよう周辺に配慮している。溶融スラグは道路舗装材に、焼却炉の余熱は工場内の冷暖房・給湯さらに吉島屋内プールに利用、蒸気タービン発電機による発電能力を持ち工場内施設で消費、余剰電力を電力会社へ売電する、などリサイクルが進められている。工場見学もできる(要予約)。

この建物は1995年被爆50周年にあたり広島市が優れたデザインの社会資本整備を進めてきた「ひろしま2045:平和と創造のまち」事業によって整備された公共施設にあたる。設計は谷口建築設計研究所(谷口吉生)、サインデザインは八木保。

まず特徴として、“平和の軸線”平和公園内の原爆ドーム・原爆死没者慰霊碑・広島平和記念資料館が作る広島市の南北の都市軸をそのまま施設に取り込んでいることが挙げられる。平和公園から続きゴミ運搬車の搬入路となる吉島通りの突き当りに建物があり、その同軸上に建物を貫くように1階がゴミ運搬車路・2階以上が「エコリアム」と呼ばれる吹き抜けの工場見学スペースとなっている。そこから更に抜けると海を展望できるデッキがある。

エコリアムを中心に回遊式でゴミ処理の過程を見学できる。空間はガラス張りで空気は脱臭処理され清潔感を演出し、ゴミ処理の各プラントを美術館の展示のように美しく見せている。その様子は、SF映画に出てくる宇宙基地のような雰囲気、と評されている[6]。また屋内に樹木を植えクリーンなイメージを演出し、メタリックな設備との融合を果たしている。

旧工場を稼働させながら現工場を建て替えていたため、敷地南側の海面約43,000m2を埋め立てた上に建設している。旧工場跡地は現在駐車スペース。周辺は公園、自然と水辺のコミュニティ空間となっている。

谷口吉生 – Wikipedia

谷口 吉生(たにぐち よしお、1937年10月17日 – )は、日本の建築家。丹下健三都市・建築研究所での勤務を経て、計画・設計工房を設立し、谷口吉郎建築設計研究所所長、谷口建築設計研究所所長などを歴任した。 資生堂アートハウスの設計で1984年 日本建築学会賞、土門拳記念館の設計で1984年 吉田五十八賞、 東京都葛西臨海水族園の設計で1990年 毎日芸術賞を受賞するなど受賞多数。

東京府出身。ハーバード大学で学び、学位はMaster of Architecture(1964年) 。一級建築士、日本芸術院会員、文化功労者。勲等は旭日中綬章。1956年 慶應義塾高等学校卒業、1960年 慶應義塾大学工学部機械工学科を卒業。ハーバード大学建築学科大学院に進学し、Master of Architecture(建築学修士)を取得 。ボストンの建築設計事務所で勤務し、1965年から東京大学都市工学科の丹下健三研究室および丹下健三の都市・建築研究所に所属し建築家としての仕事を行う。

1975年には独立し、自身の「計画・設計工房」を設立。1979年には自身の名を冠した谷口吉郎建築設計研究所の所長に就任。資生堂アートハウス(1978年)の設計で、1984年日本建築学会賞を受賞。土門拳記念館(1983年)の設計で、1984年 吉田五十八賞および1987年 日本芸術院賞を受賞。東京都葛西臨海水族園(1989年)の設計で1990年 毎日芸術賞 を受賞。

他にも、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、東京国立博物館の法隆寺宝物館、ニューヨーク近代美術館の新館などを手掛けた。

広島市環境局中工場 BCS賞 | 日本建設業連合会 – PDF

「広島ピースアンドクリエーション事業」の一環として建設された 清掃工場であるが、重要な都市インフラのひとつでありながら隅に追いやられがちな清掃工場を、都市景観と市民生活のなかにしっかりと位置づけ直した作品である。すべての建築は公共性の視点から考えると、重要度の優劣なく設計されるべきものであり、設計者はその設計技量と工夫によって都市と建築の関係性を明快にしている。まず、平和公園から続く都市軸主要な幹線道路であるとともに直線的に視線の通る都市スケールでの眺望軸でもあるがをそのまま施設に取り込んで、海へ抜け、眺望軸として確保するとともに、 市民が清掃工場にアクセスするための動線として、施設全体の要の空間である「ECORIUM 」を形成している。ECORIUM は吹抜けの大きな空間であり、施設全体の構成を把握することができる。また、ごみ処理の機械類に挟まれて植栽が施され、自然の生命と人間の 消費活動の対比を感じさせる空間となっているが、植栽の大きさや密度についてはやや物足りないのではとの意見もあった。

この空間を中心にごみ処理のプロセスを見学することのできるルートが回遊形式で計画され、自分の位置を確かめやすい動線計画となっている。ごみ処理のプロセスは、焼却ゾーンと灰溶融ゾーンとに大きく分けられ、各種のプラントをガラス越しに眺めることができるが、内部は負圧となって見学者側には臭いが漏れない工夫がしてある。ごみ処理の機械設備を美しく見せることに対しては設計者は 美術館の展示として考えるほどの周到さをもって取り組んでおり、来館者もごみ処理施設とは思えない完成度に十分な満足を覚えるに 違いない。また、灰溶融炉に併設された発電により売電を行い、運営費の削減を図っている。

外部は事務室の窓も含めてルーバー(日除け)で均質に覆われているが、都市の中心にある施設であることを考えればもう少し柔らかい表情があってもよかったのではないかとの意見もあった。エコリウムを抜ける歩行者動線は軽やかな構造方式による美しい空間が実現しているが、その端部は広島湾に開かれて自然の美しさを感じさ せる演出となっている。親水公園はゲートボールなどが行われる多目的の緑地として整備されており、市民の憩いの場となっている。建築の空間構成と都市空間の軸線との深い関係性の構築、細部にまでわたる細やかな建築へのこだわり、そしてそれを実現させたクライアントの使命感と施工者の技術が高度に協働しあった作品として仕上がっている。