日産ラシーンのデザイン開発 – 前例のない開発手法に見るこれからのモノ作り


父が本をだしました。
日産自動車勤務時代に携わった
ラシーンという車のデザイン開発に関する本です。

それまで主流だったスピード感を追求した車から
生活の中に溶け込む家電のような大衆車へ。

その開発手法は、車のデザインに関心のない人であっても、
プロダクトデザインやものづくりに関わりのある人や、
プロジェクトの企画・マネージメントに関わる人にとっても役立つ本だと思います。

個人的には、部や課を超えた組織内の協同プロジェクトや
ヘリテイジ・デザインという継承されていくデザインの手法が興味深い内容でした。
* Heritage:〔受け継がれる文化・歴史的〕遺産、伝統」


最終インテリアスケッチ案。
軽飛行機の計器盤のようなデザイン

日産初のパイクカー Be-1


部品部とデザイン本部が、協働で作業を行うことは初めてだったそう。

「ラシーンJ開発に見るプロダクトデザインの可能性三樹書房

クルマの歴史は、エンスージアストたちのその情熱の歴史であった。その一方で、多くの人々に向けた大衆車が自動車産業を支えてきたことも事実である。大衆車の開発においては、流通価格をおさえてコストの削減を図らねばならないところから、既存の技術や工法が優先され、さらに営業主導により短期間で世に送り出されることが常である。

しかし「ラシーン」の開発は、恵まれた背景のもとで熟成されて生まれた、日産最後のパイクカーであった。

クルマの新しい役割を模索したプロセスから生み出された「ラシーン」。そこには「自然との融合、原点への回帰Jをコンセプトに、それまでのバイクカーを超えた目標があった。乗り続ける喜びを有しながらも、エコロジーな社会を予見した、ヒューマニティ(人間らしさ)と先端技術とのパランスの中で、大衆車の本質の表現も試みられている。また「家電製品」のような、日常的道具として存在した先駆けでもあった。

また、実現化されなかったが、開発当時にエレクトロニクスコミュニティーといえる、インタラクテイプ(双方向)な情報機器を猪徹して、移動空間の新たなる可能性が検討されたことも興味深い。

プロダクトデザインを志す若者たちが、この「ラシーン」の開発プロセスを垣間見ることで、その面白さ、さらにはこれからのクルマ作りに魅力を感じることであろう。本書の著者であり、当事者でもある坂口普英氏によって、通常のクルマの開発セオリーとは一線を画してプロダクトの本質を求めたデザインプロセスを細部まで記されたその内容は、刺滋的である。また、このプロセスは、次世代のEV(電気自動車)時代に向かって、新エネルギー発電や蓄電池の進化を活用しながら、若者たちが「まちを形成するためのモピリティーのデザイン」という、クルマの新しいテーマを追求していく指針ともなるだろう。

プロダクトデザインは、デザイナーの晴好を押し付けるだけではいけないのは当然として、ターゲットとしているユーザー層が本当に欲しいもの何であるのかをしっかりと見極める「本音のデザイン」が求められる。それはまた、ライフスタイルに応じて生活をより豊かにするデザインであるともいえ、それを実践したのが「ラシーン」であった。本書が若者たちにとって、クルマに限らず、プロダクトデザインの本質を考え、新しいテーマを追求していくきっかけとなることを期待したい。

プロダクトデザイナー 川上元美

参考:
三樹書房:日産ラシーンのデザイン開発
僕たちのどこでもドアはこうして開発された‎ – レスポンス
日産・ラシーン – Wikipedia
ラシーンの中古車 | 中古車なら【カーセンサーnet】
見本PDF (三樹書房)


「日産ラシーンのデザイン開発 – 前例のない開発手法に見るこれからのモノ作り」への5件のフィードバック

  1. 日産ラシーンのデザイン開発 – 前例のない開発手法に見るこれからのモノ作り http://t.co/SC8bQ84 via @yousakana 「父が本をだしました」「それまで主流だったスピード感を追求した車から生活の中に溶け込む家電のような大衆車へ」

  2. 偶然たどりつきました。
    かつてお父上様と接近した職場にいた者です。
    1984~1990年にかけてBe-1、PAO、FIGAROの全てに関わりました。
    上記解説の中で「部品部とデザイン本部が協働で・・」というのは誤りですね。
    Be-1の時代から既にやっていました。
    詳しくは同じ三樹書房のエンスーCARガイド「PAO&FIGARO&Be-1」をご覧下さいませ。

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