神山町の新しい集合住宅の第一期入居者募集が始まりました。
全国、いや世界中から移住者が集まる徳島県神山町は、私のいる佐那河内村(さなごうちそん)の隣の町です。工事現場を拝見したいと連絡したところ、神山つなぐ公社で働く高田友美さんと赤尾苑香さんに集合住宅と交流拠点の建設現場を見学させていただきました。
子育て世代向けの集合住宅で、お子さんが高校を卒業するまでの間の住宅となり、10月31日まで第一期入居者募集をしております。神山に移住したい方や、すでに神山町内に住んでいて新しい暮らしをはじめたい方、神山町に帰りたいと考えている方など、これをきっかけに募集してみてはいかがでしょうか。
神山町内に図書館がないため、図書スペースを軸にしたコミュニティスペースも充実させていくそうなのでますます楽しみです。
神山つなぐ公社・すまいづくり担当の赤尾苑香さんに大埜地(おのじ)の建設現場を案内していただく私(右)。photo by 高田友美さん
敷地のすぐ横を流れる鮎喰川(あくいがわ)。阿波の青石が映えるとっても綺麗な川の水。オレンジ色の鯉が泳いでいました。神山の森林利用を促すことで山の保水力を取り戻し水量を増やすことで、名前の通り鮎の泳ぐ川を取り戻そうというのもこのプロジェクトの指名のひとつ。
川へのアクセスもよく、夏場は川遊びスポットになりそう。ちなみに、川沿いのとても気持ちのいい場所に集合住宅の敷地がありますが、過去に敷地が浸水した記録はないそうので、災害も心配なさそうです。
神山町の地元の大工さんたちにこのプロジェクトに継続的に関わってもらうために、時間をかけ20世帯ぶんの長屋式住宅全8棟を3〜4年かけて工事していきます。
ランドスケープデザイナーの田瀬理夫さんにプロジェクトにはいってもらうことで、この土地に元々あった植生や周辺の山の景色などを大切にしながら、集合住宅の風景をつくっています。
「鮎喰川はまちの背骨になっていて、すべてが鮎喰川からはじまっている。川をどう扱っていくかが大切だ」と、ランドスケープデザイナーの田瀬理夫さん。
シンボリックな植栽も残されています。
地元の高校生たちと神山の山で拾ってきたどんぐりを育て、種から風景をつくっていく作業をすすめています。
もともとあった建物を壊した時に出た石材を、活用するために保管。
象の形をした特徴的な象山(ぞうやま)も集合住宅からみえます。川や山といった自然豊かな神山の周辺の景色を意識しながら建物の全体計画が決まっているのもこのプロジェクトの特徴。ランドスケープデザイナーさんが加わっているとそうした視点が色濃く出ていて頼もしい。
住宅に使われる神山町産材を乾燥させているところ。今後は天然乾燥も検討しているとのこと。
もともとあった建物を取壊した時にでた石材も、大きさをわけて利活用しています。よくみると川の丸い石や青石などが含まれています。
もともとここにあった神山中学校の元寄宿舎「青雲寮(せいうんりょう)」の看板。
シンボルとして残し、活用されます。
募集戸数:4戸
受付期間:2017年10月16日(月)~31日(火)
入居対象:
・高校生以下の子どもと同居している世帯(町外校への通学も含む)
・年上の者が50歳未満の夫婦
*定期借家契約を結び、入居期間を設定します。入居要件を満たす間は再契約可。
*町内にお住まいの方も、町外にお住まいの方も対象。この棟は単身者は対象外です。
ひとり親世帯も対象に含まれます。親族(老親等)の同居も可。家賃(+共益費):45,000円(+3,000円)/月
*敷金は家賃の2ヶ月相当額
*駐車場使用料は無料(各戸2台まで。転貸不可)。地域熱供給システムの熱料金が、
使用量に応じ別途請求されます。調理用コンロのプロパンガスや水道・電気は各戸毎の別契約です。その他
・ペットは原則として不可
・物置など仮設建築物の屋外設置は不可
・間仕切り壁の設置など建物に手を加える場合は事前に協議が必要
・バリアフリー対応のフラット住戸、及び単身者用のシェア住戸は第二期工事で建設予定
まちの人、帰る人、移ってくる人に
地域の手と資源で
長く住み継がれる公営の賃貸住宅をつくる神山町は、四国の徳島県にある、人口約5,300名の中山間地です。鮎喰川を軸にした流域の町で、徳島駅前から町役場までは車で45分ほど。神山は町域が広いため、保育所や学校から家に帰ると近所に同世代の子供が少なく、育ち合いの機会を逸しかねない環境が近年生じています。新たに家を建てる土地の見つけにくさや、移り住んでみたい人に貸し出せる家が不足しがちな状況もありました。
そこで子育て・働き盛りを中心に、将来世代に繋がる人々が人生のある時期を暮らし、新しい兄弟関係や隣人としての関係性を育み合える場を、町の賃貸住宅として整備します。
神山の木で、まちの人が作る
建物は神山の木材でつくります。より地場産材の利用が進むよう、本開発を契機に「町産材認証制度」も整備されました。流域の山で伐った木を製材し乾燥させて、家を建てていきます。大規模な建設工事はその発注規模から町外の大手工務店等に頼る形となりやすく、それは町の大工さん等が自分たちの町をつくる事業に参画しにくい状況を生み出します。
そこでこの開発では分棟型の木造建築として設計し、かつ開発を3年間にわたらせることで、町内の大工さん等が腕を振るいながら少しずつ完成させてゆくことを可能にしています。これは人材育成の機会でもあり、町のお金を町外に流さずに、地域内経済循環性を高めることにもつながります。近くの学校の子どもたちは、家々が建ってゆく過程と大人が働く姿を数年間垣間見ることになります。植栽は、町の高校の生徒さんたちと山で集めた種から育てた苗木を中心に、地域の植物で構成します。
空間と人がともに育ち、これまで離れ離れにあった地域資源をつなぎ直す、多義的な建設プロジェクトを目指しています。
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