香川県まんのう町佐文(さぶみ)に伝わる「綾子踊(あやこおどり)」を撮影させて頂きました。 綾子踊は、干ばつに苦しんできた讃岐の人々が、雨を願って奉納してきた踊り。国の重要無形民俗文化財に指定され、ユネスコ無形文化遺産「風流踊」のひとつにも登録されています。 佐文に残る「綾子踊り控記録(あやこおどり ひかえきろく)」には、1814年(文化11年)6月18日に踊ったという記録があります。 さらに1875年(明治8年)には、旱魃(かんばつ)のなかで何度も踊り、最後には「雨があり御利生(ごりしょう)あり」(願いが通じて恵みの雨が降り、神仏のありがたいご利益を授かった)と記されています。
I went to film the ‘Ayako Odori’, a dance passed down in Sawamu, Mannō Town, Kagawa Prefecture. The Ayako Odori is a dance that the people of Sanuki, who have long suffered from drought, have performed as an offering to pray for rain. It has been designated as an Important Intangible Folk Cultural Property of Japan and is also registered as one of the ‘Furyū Odori’ (Elegant Dances) on the UNESCO List of Intangible Cultural Heritage. The ‘Ayako Odori Record’ preserved in Sawamu contains an entry stating that the dance was performed on 18 June 1814 (the 11th year of the Bunka era). Furthermore, in 1875 (the 8th year of the Meiji era), it is recorded that the dance was performed repeatedly during a drought, with the entry concluding: ‘Rain fell and blessings were bestowed.’
そして2026年。今年の讃岐では少雨が続き、取水制限が行われています。水不足への不安が広がるなか、佐文で今年も綾子踊が奉納されました。 太鼓と鉦、歌声に合わせて、人々が踊る。そして祭りが終わったあと、まんのう町では雨が降りはじめました。
And now, in 2026. This year, Sanuki has experienced a prolonged period of low rainfall, and water withdrawal restrictions are in place. Amid growing concerns over water shortages, the Ayako Dance was once again dedicated in Sawan this year. People danced to the rhythm of the taiko drums, gongs and singing. And after the festival ended, it began to rain in Mannō Town.
1814年から続く記録のなかで、旱魃のたびに人々が雨を願い、踊ってきたことを思うと、この雨が少し特別なものに感じられます。雨を待つこと。 水を願うこと。 そして、その祈りを踊りとして次の世代へ渡していくこと。 綾子踊りは、讃岐の人々と水との長い関係を、今に伝える「生きた記憶」なのだと思います。
When one considers the records dating back to 1814, which show that whenever a drought struck, people would dance in prayer for rain, this rain feels somewhat special. Waiting for rain. Praying for water. And passing those prayers on to the next generation through dance. I believe the Ayako Dance is a ‘living memory’ that conveys the long-standing relationship between the people of Sanuki and water to the present day.
綾子踊(あやこおどり)
日程:隔年の8月末から9月初めの日曜日
住所:加茂神社(かもじんじゃ) 香川県まんのう町佐文(さぶみ)[Google Map]
指定:国の重要無形民俗文化財 1976年(昭和51年)5月4日
登録:ユネスコ無形文化遺産 2022年(令和4年)11月30日
Ayako Dance (Ayako Odori)
Dates: The Sunday between late August and early September every other year
Address: Kamo Shrine, Sabumi, Mannou Town, Kagawa Prefecture [Google Map]
Designation:Important Intangible Folk Cultural Property of Japan 4 May 1976 (Shōwa 51)
Registration: UNESCO Intangible Cultural Heritage 30 November Reiwa 4
2026/09/06
綾子踊(あやこおどり)は、香川県まんのう町佐文に伝わる雨乞いの踊りです。国の重要無形民俗文化財やユネスコ無形文化遺産にも登録されており、その起源には「1200年前の伝承」と「400〜500年前の史実」という2つの魅力的な側面があります。
地元には、平安時代に弘法大師(空海)が干ばつに苦しむ村人を救うため、「綾」という女性に踊りを教えて雨を降らせたというロマンあふれる伝説が残されています。しかし、実際の歴史や芸能史の視点から見ると、踊りのスタイルや歌詞は室町時代末期から江戸時代初期(約400〜500年前)に流行した「風流(ふりゅう)踊り」や初期の歌舞伎の面影を強く残していることが分かっています。歌われる歌詞の一部は、室町時代の歌謡集『閑吟集(かんぎんしゅう)』の小歌とも共通しています。
このように、学術的には約500年前に形作られた芸能とされていますが、度重なる水不足に悩まされてきた地域の人々が、郷土の偉人である弘法大師への深い信仰とともに、大切にこの伝統を現代まで守り伝えてきた証拠でもあります。
The Ayako Odori is a rain-praying dance handed down in Sawamu, Mannō Town, Kagawa Prefecture. It is designated as an Important Intangible Folk Cultural Property of Japan and is also inscribed on the UNESCO List of Intangible Cultural Heritage; its origins feature two fascinating aspects: a ‘legend dating back 1,200 years’ and ‘historical facts from 400 to 500 years ago’.
A romantic legend persists in the local area, recounting how, during the Heian period, Kōbō Daishi (Kūkai) taught a dance to a woman named ‘Aya’ to bring rain and save the villagers suffering from drought. However, from the perspective of actual history and the history of performing arts, it is known that the dance style and lyrics strongly resemble ‘Furyū Odori’ and early Kabuki. Parts of the lyrics are also shared with the kōta (short songs) found in the Muromachi-period anthology *Kanginshū* .
Thus, whilst academically it is regarded as a performing art that took shape some 500 years ago, it also serves as evidence that the people of this region—who have long suffered from repeated water shortages—have cherished and preserved this tradition to the present day, driven by their deep faith in Kōbō Daishi, a local hero.
雨乞いといえば龍神。
太刀
雨
鯱(しゃちほこ)
加茂神社の森。香川県指定自然記念物
花菖蒲(はなしょうぶ)
綾子踊の花笠は、踊り子の頭上を彩る象徴的な装束です。現在は、笠の上に菖蒲の花を模した造花が飾られています。 綾子踊は、旱魃の際に雨を願って奉納される「風流踊」の一つ。そのため、花笠の菖蒲を「水に縁のある植物だから雨乞いに使われた」と考えたくなりますが、実はそう単純ではありません。 菖蒲(ショウブ)の開花は5月頃、花菖蒲なら5~6月頃が中心で、夏の旱魃期に行われる雨乞いとは必ずしも季節が一致しません。むしろ、花笠に花を戴くという「風流踊」そのものの装飾文化の中で、菖蒲が受け継がれてきた可能性があります。
・ショウブ(菖蒲)=サトイモ科。花は目立たず、5月ごろに開花。
・ハナショウブ(花菖蒲)=アヤメ科。鮮やかな花を咲かせ、5~6月ごろが開花期。
また、江戸時代の記録にも綾子踊で「花笠」を用いたことが記されており、1939年には尾﨑清甫によって「花笠寸法」など、装束の形や仕様が細かく記録されました。現在の花笠も、こうした記録をもとに伝承されています。 ただし、いつから菖蒲を飾るようになったのか、かつて本物の菖蒲を使っていたのか、それとも古くから造花・装具だったのかは、現存する公開資料だけではまだ断定できません。 雨を願う踊りなのに、雨乞いの季節には咲いていない菖蒲。その花がなぜ頭上に置かれるのか。花笠は、綾子踊が単なる「雨乞い」ではなく、花や笠を華やかに飾り、人々が祈りを形にして踊る「風流」の芸能であることを伝える装束なのかもしれません。
Iris (Hana-shōbu)
The flowered hat worn in the Ayako Dance is an iconic part of the dancers’ attire, adorning their heads. Nowadays, the hat is decorated with artificial flowers modelled on irises. The Ayako Dance is one of the ‘Furyū-odori’ (elegant dances) performed as an offering to pray for rain during times of drought. Consequently, one might be tempted to think that the irises on the flowered hat were used in rain-praying rituals because they are ‘plants associated with water’, but in reality, it is not quite that simple. The flowering season for irises (shōbu) is around May, whilst for Japanese irises (hana-shōbu) it is mainly from May to June; these do not necessarily coincide with the seasonal timing of rain-praying rituals held during the summer drought period. Rather, it is possible that the iris has been passed down as part of the decorative culture inherent in the ‘Furyū Odori’ itself, which involves adorning the flowered hats with flowers.
・Iris (Shōbu) = Araceae family. The flowers are inconspicuous and bloom around May.
・Hana-shōbu (flowering iris) = Iridaceae family. It produces vivid flowers, with the flowering period being around May to June.
Furthermore, records from the Edo period also mention the use of ‘hanagasa’ in the Ayako dance, and in 1939, Kiyoshi Ozaki meticulously documented the shape and specifications of the costumes, including the ‘hanagasa dimensions’. The Hana-gasa of today is also passed down based on these records. However, it is not yet possible to determine definitively from the extant public records alone when the practice of decorating with irises began, whether real irises were once used, or whether artificial flowers and accessories have been used since ancient times. Although it is a dance to pray for rain, irises do not bloom during the season for rain-praying rituals. Why, then, are these flowers placed upon the head? The Hanagasa may well be a costume that conveys the fact that the Ayako Odori is not merely a ‘rain-praying’ ritual, but rather an ‘elegant’ performing art in which people give form to their prayers through the splendid adornment of flowers and hats.
基盤整備竣工事業
水の踊り。綾子踊「水の踊(みずのおどり)」――水を待つ人々が歌った雨の情景。
香川県まんのう町佐文に伝わる「綾子踊」は、雨乞いの祈願を本旨とする風流踊です。1976年に国の重要無形民俗文化財に指定され、2022年には「風流踊」の一つとしてユネスコ無形文化遺産にも登録されました。綾子踊には12曲の小歌が伝わり、その最初に謡われるのが「水の踊」です。文化庁は「水の踊」「四国踊」「綾子踊」「忍びの踊」など12曲が伝承され、それぞれの小歌に合わせて踊ることを記録しています。
「水の踊」は、次のように始まります。
> 堺の町は 広いようで狭い
> 雨さえ降れば 蓑よ笠よ
> ヒヤ 雨が降ろと ままいの
> ソレ しつぽとぬうれて
> ソレ 水か水かサア
> こうちござれ こうちござれ
2番では「堺」が「池田」に、3番では「八坂」に変わり、雨が降り、蓑や笠を身につけ、人々が雨に濡れ、「水か、水か」と呼びかける構成になっています。歌詞は、真鍋昌弘『綾子踊歌評釈――祈る・歌う・踊る 綾子踊り 雨を乞う人々の歴史』(まんのう町教育委員会、2018年)をもとに紹介されています。ここで興味深いのは、雨乞いの歌なのに、「雨が降ってほしい」とだけ歌っているわけではないことです。
「雨さえ降れば、蓑よ笠よ」
「しつぽとぬうれて」
「水か、水か」
そこに描かれているのは、雨が降った「後」の世界です。まだ雨が降っていない雨乞いの場で、雨が降り、人々が濡れ、水がもたらされた情景を先取りして歌う。真鍋昌弘の研究を紹介した資料では、こうした性格を、雨乞いの願いがかなった状態をあらかじめ歌う「予祝」という視点から捉えています。さらに面白いのが、歌の冒頭に出てくる地名です。
「堺」「池田」「八坂」。
佐文の雨を直接歌うのではなく、遠くの「町」が登場します。『綾子踊歌評釈』をもとにした研究では、綾子踊の歌には雨乞いだけでなく、恋愛や船、港などを題材にした歌が多く含まれていることが指摘されています。つまり、綾子踊の歌は、もともと人々の間で広く歌われていた風流歌・小歌を取り込みながら、雨乞いの場で歌われる芸能へと受け継がれてきたと考えられます。これは綾子踊の大きな特徴でもあります。
「雨乞いだから、雨のことだけを歌う」のではない。
人々がその時代に歌っていた流行歌や恋歌、港や船の歌などを取り込みながら、それらを神前で歌い、踊ることで、雨を願う芸能として受け継いできたのです。そして、「水の踊」がその冒頭に置かれる。
乾いた大地に雨を願い、雨が降ることを想像し、蓑と笠を身につけ、身体を濡らし、「水か、水か」と喜ぶ。
そこには、水を「資源」としてではなく、待ち望み、喜び、祈るものとして捉えてきた讃岐の暮らしが表れています。1950年代には、NHKによる現地録音も行われ、「水の踊」を含む綾子踊の記録が『復刻 日本民謡大観 四国篇―現地録音CD解説』に収録されています。香川県立図書館の資料では、佐文で「水の踊」「四国船」「綾子踊」「鳥籠」「六蝶子」「帰りの踊」を録音したことが確認できます。【出典:香川県立図書館「復刻 日本民謡大観 四国篇―現地録音CD解説」98~99頁】
「水の踊」は、単なる昔の雨乞い歌ではありません。水がなければ暮らせない。だから、雨を待つ。そして、まだ降っていない雨を、歌の中では先に降らせてしまう。「水か、水か」という短い言葉には、讃岐の人々が長い年月、水と向き合ってきた記憶が凝縮されているのかもしれません。
参考:真鍋昌弘『綾子踊歌評釈――祈る・歌う・踊る 綾子踊り 雨を乞う人々の歴史』まんのう町教育委員会、2018年――綾子踊の歌詞、成立、歌謡としての性格を考えるうえで重要な研究書です。
石碑。綾子踊
団扇
雨
綾子踊
衣装と道具、唄が伝える讃岐の風流
香川県まんのう町佐文に伝わる「綾子踊」は、旱魃のときに雨を願って奉納されてきた芸能です。文化庁はこれを「風流」の一種と位置づけ、1976年に国の重要無形民俗文化財に指定。2022年には「風流踊」の一つとしてユネスコ無形文化遺産にも登録されました。現在は佐文綾子踊保存会によって、隔年の8月末から9月初めに加茂神社へ奉納されています。
けれども、綾子踊の魅力は「雨乞い」という目的だけではありません。花笠、大団扇、扇、太鼓、笛、鼓、鉦、棒、薙刀など、さまざまな道具と衣装を身につけた人々が役割を分担し、古い唄に合わせてゆっくりと踊る。その姿には、中世から近世へと続く日本の芸能文化が重なっています。花笠と大団扇を持つ「芸司」踊りの中心となるのが「芸司(げんじ)」です。芸司は花笠をかぶり、羽織袴(はおりはかま)を身につけ、大きな団扇を手にします。そして踊りに先立って口上を述べ、芸能全体を導きます。
この「大きな団扇」は、単なる小道具ではありません。芸司という中心人物を視覚的に際立たせ、踊りの進行を担う象徴的な道具です。また、現在の花笠には花飾りが付けられています。これを菖蒲とする説明もありますが、文化庁や国立劇場などの主要な公開資料には、植物名やその由来までは記載されていません。雨乞いが行われるのは主に8月頃であることを考えると、「雨や水を表す花」と単純に解釈するのではなく、花を頭上に戴く「風流」の装飾文化や、花笠そのものの継承として見る必要があります。
女子の姿をした「小踊(こおどり)」
綾子踊でもっとも目を引くのが「小踊」です。現在の小踊は男子が女装して踊ります。文化庁の解説では、小踊(こおどり)・大踊(おおおどり)・側踊(がわおどり)という複数の組によって構成され、国立劇場も「赤布を垂らした花笠姿の小踊」「青布を垂らした花笠姿の大踊」と紹介しています。この女装には、単なる衣装上の趣向を超えて、近世の芸能とのつながりが見えます。文化庁は綾子踊について、「その芸態に初期歌舞伎踊風の面影を遺している」と説明しています。国立劇場も、踊り歌には初期歌舞伎踊の歌詞や旋律が伝えられているとしています。つまり、佐文の山間で伝承されてきた雨乞いの踊りの中に、かつて都市や街道を通じて広がった芸能文化の痕跡が残っているのです。
棒と薙刀(なぎなた)――踊りの前に「場を清める」綾子踊は、いきなり踊りから始まるわけではありません。最初に登場するのが、棒振りと薙刀振りです。彼らは踊り場の四方を祓い、問答を行います。その後、芸司の口上を経て、踊りへと移っていきます。これは、芸能が単なる「舞台上の踊り」ではなく、踊りを行う空間そのものを清め、神聖な場へと切り替える儀礼性を持っていることを示しています。「棒」と「薙刀」は武具を模した道具でもあり、場の境界を守る役割を担っています。唄が主役の踊り綾子踊では、派手な振り付けよりも、唄とゆったりした所作が大きな特徴です。曲目には「水の踊」「四国船」「綾子踊」「忍びの踊」など12曲が伝えられ、それぞれの小歌に合わせて踊りが展開します。太鼓、笛、鼓、鉦などが囃子を加えます。
香川県の文化財紹介では、唄は中世から近世初期にかけて流行したものとされ、近世初期の歌舞伎の踊歌の特徴を残すと説明されています。踊りそのものも、派手に跳ねたり走ったりするのではなく、唄に合わせてゆらゆらと身体を動かすのが特徴です。(さぬき歴史文化探訪ナビ)。
ここに綾子踊の大きな魅力があります。古い歌を、古い旋律のまま、身体の動きとともに現在まで伝えている。つまり、綾子踊は「踊り」だけが残ったのではなく、唄・旋律・衣装・道具・役割・所作がひとまとまりになった総合的な芸能なのです。「水の踊」という名前曲目の中には、そのものずばり「水の踊」があります。雨乞いの芸能である綾子踊に「水の踊」が存在することは、非常に象徴的です。ただし、綾子踊の歌詞は単純に「雨を降らせてください」と願うだけではありません。香川県の文化財紹介によれば、芸司の口上もかつては祈雨(きう)を中心としていましたが、現在は水への感謝が主な内容となっています。これは、綾子踊が現代においても「雨乞いの再現」にとどまらず、讃岐にとって水とは何かを考えさせる芸能になっていることを示しています。
衣装と道具がつくる「風流」
綾子踊を少し離れて見ると、実に多くのものが頭や手元にあります。花笠、大団扇、扇、棒、薙刀(なぎなた)、太鼓、笛、鼓(つづみ)、鉦(かね)。これらは、それぞれが独立した小道具ではありません。花笠が踊り手を「日常の人」から「踊りの人」へと変え、大団扇が芸司の存在を際立たせ、棒と薙刀が場を清め、太鼓や笛や鉦が身体の動きを支え、そして古い唄が全体を一つにまとめる。衣装・道具・音楽・身体が一体となって、日常とは異なる「風流」の世界をつくっている。これこそ、綾子踊が「雨乞い踊り」であると同時に、「風流踊」として評価されてきた理由の一つでしょう。讃岐の水をめぐる記憶として讃岐は雨が少なく、大きな河川にも恵まれない土地です。だからこそ、ため池や水路をつくり、水を分け合い、雨を願ってきました。綾子踊は、そのような讃岐の水の歴史を、文章ではなく、身体と唄と装束によって伝える文化ともいえます。花笠をかぶり、古い唄を歌い、ゆっくりと身体を揺らし、太鼓や鉦が響く。そこには、何百年にもわたって讃岐の人々が水と向き合ってきた記憶があります。そして今、気候変動や渇水によって、再び「水」が地域の大きなテーマになっています。綾子踊を現代から見ると、それは昔の雨乞いを保存するだけのものではありません。「水の少ない土地で、人はどう水とともに生きてきたのか」。その問いを、花笠と唄と踊りを通して、現在の私たちに手渡している芸能なのです。
仲多度郡仲南町佐文に伝承される風流の一種で、雨乞いの祈願をその本旨とした念仏踊風のものである。夏の早ばつ時に行われるため不定期であるが、おおよそ八月中・下旬に行われる。踊りは、まず朝日山の竜王祠前で演じられ、次いで賀茂神社前で行う。その次第は、長刀持と棒持が踊場の中央で口上を述べて踊り、次に芸司の口上のあと子踊、大踊、側踊の組が並んで踊る。曲目には、「水の踊」「四国踊」「綾子踊」「忍びの踊」など十二曲があり、それぞれの小歌に合せて踊を展開する。その芸態に初期歌舞伎踊風の面影を遺している。
綾子踊(あやこおどり) – まんのう町の文化財 – まんのう町(生涯学習課)
ユネスコ無形文化遺産登録〈登録年月日〉令和4年11月30日
国の重要無形民俗文化財〈指定年月日〉昭和51年5月4日
〈所在地〉まんのう町佐文(さぶみ)
〈保存団体〉佐文綾子踊保存会まんのう町佐文に伝わる綾子踊は、干ばつ時に雨乞踊として臨時に行なわれてきた。近年は佐文綾子踊保存会によって、隔年の8月末から9月初めの日曜日、加茂神社(かもじんじゃ)に奉納されている。踊の次第は、まず棒振(ぼうふ)りと薙刀(なぎなた)振りが踊りの場の四方を祓い問答(もんどう)を行なう。続いて踊り手一行が踊りの隊形を作り、花笠を被った羽織袴姿で手に大団扇(おおうちわ)を持った芸司(げんじ)が口上(こうじょう)を述べ踊りが始まる。曲目には「水の踊」「四国船」「綾子踊」「忍びの踊」など12曲があり、それぞれの小歌に合せ、太鼓・笛・鼓・鉦(かね)などを囃子(はやし)にして展開される。踊り手は小踊、大踊、側踊(がわおどり)の組に分かれる。踊り手のうち、小踊と大踊はみな女装の男子で、芸態に江戸初期の歌舞伎踊をうかがわせるなどの特徴がある。令和4年11月30日、ユネスコ無形文化遺産保護条約第17回政府間委員会において、まんのう町の綾子踊を含む風流踊(ふりゅうおどり)がユネスコ無形文化遺産へ登録された。
Ayako-odori(英語訳:English translation) – まんのう町の文化財 – まんのう町(生涯学習課)
Registered in 2022 as UNESCO Intangible Cultural Heritage
Designated in 1976 in Important Intangible Folk Cultural Properties of JapanAyako odori is a ritual dance intended to bring rain that has been passed down in Sabumi, Manno Town, Nakatadogun. The Sabumi area is a small basin on the south side of Mt. Zozu, and has long suffered from water shortages. When there were droughts, people performed a rain dance and prayed to the dragon god for rain. Originally, it was danced at Ryuoshi Shrine and Kamojinja Shrine. Currently, it is presented at Kamojinja Shrine once every two years in early September.
The waving of sticks and naginata (a type of polearm) purify the location, and after the genji (the speaker) says a prayer, the dance begins. It is said to retain traces of old kabuki dancing, and boys in colorful costumes perform dances to 12 short traditional songs that were popular in the Japanese Middle Ages.
In 2022, it was registered as a UNESCO Intangible Cultural Heritage as one of the furyu odori (ritual dances). Intangible cultural heritage is a project to protect culture and technology that has continued since ancient times. It covers festivals, performing arts, and knowledges from all over the world, and in Japan, kabuki theater and washoku (traditional dietary culture) are also registered. The ayako odori dance, which has been cherished in this area, has become a cultural heritage that can be boasted of to the world.


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