春の海 終日(ひねもす)のたりのたり哉(かな)
与謝野蕪村


直島沖の釣り船


豊島

豊島の坂
豊島の下り坂。

豊島の猫

豊島美術館


しまなみ海道 (愛媛県今治市)


蕪村の旅|春の海 終日のたり のたりかな:JR西日本

柔らかな日ざしのなか、波穏やかな与謝の海が広がっている。白砂青松を海上に連ねる天橋立、彼方の丹後半島の山々もうす墨で描いたように霞んでいる。つい、うとうとと気持ちよく眠ってしまいそうな風景だ。そして、頭に浮かんだのがこの一句。

  春の海 終日[ひねもす]のたり のたりかな

 作者は、与謝蕪村。この句は、丹後与謝の海を詠んだともいわれている。しかしこの句を目にすると、まどろむような海の情景がたちまち現れる。光溢れた印象派の風景画を見るように、平明で親しみやすい。そんな叙景性が蕪村の句の特徴であり、魅力でもある。主観的な芭蕉の句に対して、蕪村はあくまで写実的で客観的だ。

 生涯におよそ3000句を発句した蕪村は、十七音を自在に操り、「菜の花や 月は東に 日は西に」では、大景を詠う豪腕を披露するかと思えば、「学問は 尻からぬける ほたるかな」や「戸をたたく 狸と秋を おしみけり」など滑稽で笑いを誘うほど、その手際は硬軟、多彩だ。和漢の言語に通じ、詩の形式を変幻自在に使い分け、時に混在させる。発想は奔放で枠にとらわれない。

春の海ひねもすのたりのたりかな – 覚えておきたい有名な俳句・短歌

春の海は、一日中ゆったりとうねっていて、まことにのどかなことだ。 
「ひねもす」=一日中。季語:春の海(春)