「向こう」のある舞台



厚人のブログで舞台の高さについて書いてあったので、
それに関係して、普段僕が舞台美術を考えるときに意識していることを
ひとつだけメモしておこうと思います。空間の抜けについて。
僕は大学を卒業してから劇団印象の厚人に誘われて舞台美術をはじめ、
これまで、演出家のレシピを形にするひとりのコックとして
いろんな経験をさせていただいてきました。
これからもずっと演劇をはじめ空間をつくる仕事ができたら幸せだと思っているのですが、
自分の事を演劇人だと思ったことは不思議とありません。むしろ演劇は苦手なんです。
何が苦手って、言い出したらキリがないのですが、
一番大きいことは、窓のない閉塞的な空間につめこまれて
おしりの痛い思いをしながらみなくてはいけないこと。
絵を描くとき、白い紙に筆をはしらせるのか、
黒い紙に筆を走らせるのかは大きな違いです。
言ってみれば、小劇場の舞台とは黒い紙に筆を走らせることが余儀なくされている状態です。
それを疑わなくてはならない。
かといって、大きな劇場でなんてめったに舞台はできません。
むしろ環境が良くない小劇場だからこそ趣向の凝らしがいがあるというものです。
空間ができるだけ圧迫感のないように空間の向こう側をつくるのです。
このことを空間の「抜け」とか「透明感」とも呼んでいます。
それは時には役者のアクティングスペースを削ぐことになりますが、
空間の見えは格段に広く感じられるのです。
演劇が苦手な僕だからこそ、これまで「演劇」と呼ばれてきた世界を疑って
新しいことができたらいいなと


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